術前の鑑別が困難であった交通外傷後脾症の1例

症例は71歳の男性.18歳時に交通外傷による脾損傷,左腎損傷で脾摘術および左腎摘出術を受けた.2023年3月にかかりつけ医より検診で尿蛋白を指摘され,精査目的に紹介.腎機能は問題なく尿蛋白について経過観察となった.その際に行ったCTで,肝左葉の外側腹側面に発育する50mm大の腫瘤性病変を認め,当科に紹介となった.画像所見から肝細胞癌が疑われ,2023年5月に肝外側区域切除術を施行した.術中所見では横隔膜面から肝外側区域に嵌入し,一部肝実質に連続する5cm大の腫瘤性病変を認めた.病理組織検査で病変は脾臓様構造物であることが判明した.外傷による脾摘術の既往があることから,脾症(splenosis)...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 86; no. 1; pp. 104 - 109
Main Authors 近藤 芳彦, 東 久登, 小山 洋伸, 髙野 道俊, 山形 誠一, 井上 博介
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2025
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.86.104

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Summary:症例は71歳の男性.18歳時に交通外傷による脾損傷,左腎損傷で脾摘術および左腎摘出術を受けた.2023年3月にかかりつけ医より検診で尿蛋白を指摘され,精査目的に紹介.腎機能は問題なく尿蛋白について経過観察となった.その際に行ったCTで,肝左葉の外側腹側面に発育する50mm大の腫瘤性病変を認め,当科に紹介となった.画像所見から肝細胞癌が疑われ,2023年5月に肝外側区域切除術を施行した.術中所見では横隔膜面から肝外側区域に嵌入し,一部肝実質に連続する5cm大の腫瘤性病変を認めた.病理組織検査で病変は脾臓様構造物であることが判明した.外傷による脾摘術の既往があることから,脾症(splenosis)と診断した.脾症は外傷や脾摘時に脾組織が腹腔内に散布され,自家移植によって起こるとされている.今回,術前診断が困難だった外傷後53年後に発見された脾症の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.86.104