ユーザ主権型デジタル共助社会のアーキテクチャ 持ち寄り経済の技術とガバナンス

ネット経済の黎明期にはユーザ情報探索力の強化によってユーザ主導型のビジネスモデルが勃興することが予想された。しかし、現実にはその後のクラウドコンピューティングを活用したターゲットマーケティングの登場などによって逆に供給者主導の経済圏へと発展していった。利便性高い社会が生まれた一方でスポンサー利益のためにユーザの権利を侵害することへの懸念が広がっている。この状況を改善すべく、Web3.0や自己主権型アイデンティティなどの名の元でユーザに自分についての情報の流れをより有効にコントロールできるアーキテクチャが提案されつつある。政府による規制やビジネスモデル革新と合わせることで、ユーザの権利を守るデジ...

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Published in情報通信政策研究 Vol. 7; no. 1; pp. 53 - 67
Main Author 國領, 二郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 総務省情報通信政策研究所 20.11.2023
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ISSN2433-6254
2432-9177
DOI10.24798/jicp.7.1_53

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Summary:ネット経済の黎明期にはユーザ情報探索力の強化によってユーザ主導型のビジネスモデルが勃興することが予想された。しかし、現実にはその後のクラウドコンピューティングを活用したターゲットマーケティングの登場などによって逆に供給者主導の経済圏へと発展していった。利便性高い社会が生まれた一方でスポンサー利益のためにユーザの権利を侵害することへの懸念が広がっている。この状況を改善すべく、Web3.0や自己主権型アイデンティティなどの名の元でユーザに自分についての情報の流れをより有効にコントロールできるアーキテクチャが提案されつつある。政府による規制やビジネスモデル革新と合わせることで、ユーザの権利を守るデジタル社会を目指すことが望まれる。自己主権型アーキテクチャをいち早く標榜し実装した前橋デジタル田園都市においては、技術的対応に加えて情報提供者の意思と利益を守ることを使命とするデータガバナンス委員会の設置などが行われている。これらの取り組みを進める過程で(1)ユーザ主権の保護と使いやすさの相克、(2)ビジネスモデルの構築などが課題として浮かび上がってきた。いずれについても地域共同体の信頼関係とインセンティブ構造の技術的制度的整備による解決が構想できる。
ISSN:2433-6254
2432-9177
DOI:10.24798/jicp.7.1_53