鷄卵アルブミン液の屈折率に就て(其の2)
1. 鶏卵アルブミン水溶液に稀薄なるH2SO4又はNH4OH液を加へてpaH價を變化せしめた時の屈折率及び比粘度を測定して次の如き現象を見た. (a) アルブミン水溶液の屈折率はpaH價の變動と共に變異し等電點に於て高まり且つ其の反應域に於ては變異し易いことを實験した. (b) アルブミン水溶液の比粘度はpaH價によつて屈折率とは互に逆關係をて變異した. (c) 斯くの如き變異は海龜卵アルブミンの場合と同様にアルブミンイオンのイオン化度,荷電量,膨化度,抱水度等がpaH價によつて變動するためであると解釋した. 2. アルブミンの硫安溶液(硫安11.69%)に稀薄なるH2SO4又はNH4OHを加...
Saved in:
Published in | 日本農芸化学会誌 Vol. 13; no. 7; pp. 546 - 553 |
---|---|
Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
公益社団法人 日本農芸化学会
1937
|
Online Access | Get full text |
Cover
Loading…
Summary: | 1. 鶏卵アルブミン水溶液に稀薄なるH2SO4又はNH4OH液を加へてpaH價を變化せしめた時の屈折率及び比粘度を測定して次の如き現象を見た. (a) アルブミン水溶液の屈折率はpaH價の變動と共に變異し等電點に於て高まり且つ其の反應域に於ては變異し易いことを實験した. (b) アルブミン水溶液の比粘度はpaH價によつて屈折率とは互に逆關係をて變異した. (c) 斯くの如き變異は海龜卵アルブミンの場合と同様にアルブミンイオンのイオン化度,荷電量,膨化度,抱水度等がpaH價によつて變動するためであると解釋した. 2. アルブミンの硫安溶液(硫安11.69%)に稀薄なるH2SO4又はNH4OHを加へてpaH價を變化せしめた時の屈折率,比重及び比粘度を測定し更に硫安媒液についても同様なる測定をた結果,濃厚硫安溶液の屈折率,比重,比粘度等に對するアルブミンの分擔量がpaH價によつて變異する有様を算出圖示した.それを項別に要示すれば次の通りである. (a) 濃厚硫安溶液内に於てはアルブミンの屈折率,比重,比粘度等はpaH價の變動によつて變異したことは勿論であるが其の變異はアルブミンの等電點域に於て特に顯著であつた. (b) アルブミンの屈折率及び比重は等電點に於ては最大となつたが,それより酸性となれば一度急減して再び増加した.然るに硫安液の反應が等電點からアルカリ性になる時はアルブミンの屈折率と比重とは微妙にも二度急減したる後,再びpaH價の増加につれて増加した. (c) アルブミンの比粘度はpaH價によつて屈折率とは互に逆關係をて變異した. (d) 斯くの如き現象はアルブミンがpaH價によつて次の如き變異をなすためであると解釋した.アルブミンが硫安によつて基成分化,イオン化,抱水等を抑制せられながらも等電點に於てはZwitter Ion型をて充分にイオン化して抱水,膨化するが故に屈折率及び比重は大となつたのである.然るに硫安液の反應が等電點からへだたればアルブミンのイオン化が一方的に抑制せられる結果として屈折率及び比重は急減するが,更に等電點からへだたる時にはアルブミンのイオン化が一方的に増進せられ荷電量が増加する結果として屈折率及び比重は増大したのである.さりながらpaH價が2又は8附近ともなればアルブミンの不可逆的基成分化及び基成分のラセミ化も亦屈折率と比重との變異を分擔するのである. |
---|---|
ISSN: | 0002-1407 1883-6844 |
DOI: | 10.1271/nogeikagaku1924.13.546 |