水棲生物消化管内から分離されたESBLs産生大腸菌の検出と分子疫学解析

近年,ワンヘルス・アプローチの概念が重要視されており,動物や環境由来の薬剤耐性菌伝播が問題視されている.とくにESBLs(Extended-spectrum β-lactamases)産生Escherichia coliは世界的High-Risk-Clone株であるblaCTX-M-15産生B2-O25-ST131がさまざまな生物種から報告されている.本研究では,ヒトの飼育環境下になく,対象生物として検討例の少ない水棲環境生物の消化管内容物からESBLs産生E. coli 20株を分離し,耐性遺伝子解析および分子疫学解析を実施した.供試した20株はすべて系統発生群D群に分類され,blaCTX-...

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Published in日本環境感染学会誌 Vol. 40; no. 1; pp. 1 - 7
Main Authors 中嶋, 優貴, 佐々木, 潤平, 松村, 充
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本環境感染学会 25.01.2025
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Summary:近年,ワンヘルス・アプローチの概念が重要視されており,動物や環境由来の薬剤耐性菌伝播が問題視されている.とくにESBLs(Extended-spectrum β-lactamases)産生Escherichia coliは世界的High-Risk-Clone株であるblaCTX-M-15産生B2-O25-ST131がさまざまな生物種から報告されている.本研究では,ヒトの飼育環境下になく,対象生物として検討例の少ない水棲環境生物の消化管内容物からESBLs産生E. coli 20株を分離し,耐性遺伝子解析および分子疫学解析を実施した.供試した20株はすべて系統発生群D群に分類され,blaCTX-Mを保有しており,blaCTX-M-15が13株(65%),次いでblaCTX-M-14が6株(30%),blaCTX-M-161が1株(5%)であった.blaCTX-M-15保有13株を対象にPOT法による分子疫学解析を実施したところ,2種類の同一クローンタイプD-0166-nonST131,D-08-nonST131であった.検出されたESBLs産生E. coliは世界的に検出頻度の高いHigh-Risk-Clone株とは異なる環境生物由来株の可能性が示唆された.ワンヘルス・アプローチの観点から,臨床だけでなくこのような環境生物由来の耐性菌の動向にも注視していく必要性がある.
ISSN:1882-532X
1883-2407
DOI:10.4058/jsei.40.1