手技療法による血流促進効果の定量的評価と施術部位間での比較

手技療法(MT: manipulative therapy)とは、骨格筋や皮膚に対して、徒手的に揉む・ 押す・擦るなどを施し、怪我の予防や治療、リラクゼーションなどを目的とする治療である。我々はこれまで、独自に開発した拡散相関分光法装置を用いて、僧帽筋上部へのMTによる局所筋血流の促進効果を示してきた。本研究では下肢へのMTの効果について検討し、両施術部位における血流促進効果を比較した。29名の若年成人に対し、熟練した柔道整復師が片側の下腿三頭筋へ5分間のMTを実施した。局所の介入効果として両側の下腿三頭筋内側頭筋腹部の組織血流速度および施術側の皮膚血流量を、全身循環機能への介入効果として心拍...

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Published in生体医工学 Vol. Annual62; no. Abstract; p. 182_2
Main Authors 平沢, 倫, 中林, 実輝絵, 松田, 康宏, 小野, 弓絵
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本生体医工学会 2024
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Summary:手技療法(MT: manipulative therapy)とは、骨格筋や皮膚に対して、徒手的に揉む・ 押す・擦るなどを施し、怪我の予防や治療、リラクゼーションなどを目的とする治療である。我々はこれまで、独自に開発した拡散相関分光法装置を用いて、僧帽筋上部へのMTによる局所筋血流の促進効果を示してきた。本研究では下肢へのMTの効果について検討し、両施術部位における血流促進効果を比較した。29名の若年成人に対し、熟練した柔道整復師が片側の下腿三頭筋へ5分間のMTを実施した。局所の介入効果として両側の下腿三頭筋内側頭筋腹部の組織血流速度および施術側の皮膚血流量を、全身循環機能への介入効果として心拍数と平均動脈血圧を測定した。施術側では、MT前と比較してMT後には筋血流速度は約1.3倍、皮膚血流量は約1.2倍に有意に増加し、MT後から測定終了までの20分間は高値を維持した。また、施術を行わない対照側でも、筋血流速度は MT 前の約1.1倍へ有意に増加した。僧帽筋上部へ同様のMTを実施した先行研究では、施術側の筋血流速度は約2.2倍、皮膚血流量も約1.9倍に有意に増加した一方で、対照側の筋血流速度には有意な変化は生じなかった。このことから、施術部位によって血流速度の増加率や対照側への血流の影響に違いがあるものの、MTは施術部位によらず局所筋血流速度の有意な増加をもたらすことが示唆された。
ISSN:1347-443X
1881-4379
DOI:10.11239/jsmbe.Annual62.182_2