同負荷の運動における活動筋への意識 が脳活動と筋血流に与える影響

筋収縮のために脳から発出する運動指令(セントラルコマンド)は、全身の循環系を制御して活動筋に血流を再配分する自律神経系の応答を引き起こし、運動の持久性や円滑性に貢献する。セントラルコマンドの大きさは、負荷や発揮する張力とは無関係に個人の努力感や疲労感によっても変化し、活動筋へ意識を向けることで増大すると考えられている。本研究では脳波と拡散相関分光法を用いて、運動させる筋への意識の差が脳活動や対象筋の血流動態に与える影響を評価した。健常若年成人13名は、最大随意筋力の40%強度で2分間の動的掌握運動(10秒収縮・10秒弛緩)を2回行った。各試行は、運動している自身の前腕部(対象筋:利き手の浅指屈...

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Published in生体医工学 Vol. Annual62; no. Abstract; p. 179_1
Main Authors 宇賀田, 麗衣, 中林, 実輝絵, 一之瀬, 真志, 小野, 弓絵
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本生体医工学会 2024
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Summary:筋収縮のために脳から発出する運動指令(セントラルコマンド)は、全身の循環系を制御して活動筋に血流を再配分する自律神経系の応答を引き起こし、運動の持久性や円滑性に貢献する。セントラルコマンドの大きさは、負荷や発揮する張力とは無関係に個人の努力感や疲労感によっても変化し、活動筋へ意識を向けることで増大すると考えられている。本研究では脳波と拡散相関分光法を用いて、運動させる筋への意識の差が脳活動や対象筋の血流動態に与える影響を評価した。健常若年成人13名は、最大随意筋力の40%強度で2分間の動的掌握運動(10秒収縮・10秒弛緩)を2回行った。各試行は、運動している自身の前腕部(対象筋:利き手の浅指屈筋) を観察しながら運動感覚想起を行う高意識条件と、対象筋を 観察せず、音声による朗読の内容に集中し運動感覚想起を抑制する低意識条件とし、ランダムな順番で行った。運動関連脳活動、筋血流量、および発揮張力に条件間の有意な差は見られなかったが、条件に関わらず運動関連脳活動と筋血流の増加量には中程度の正の相関があった 。これらの結果は筋力向上や末梢循環の促進を目的としたリハビリテーションにおける、対象筋を意識しながら行う随意運動の有用性を示唆する。またブレインマシンインターフェースによる運動関連脳活動の増大を目的としたトレーニングと組み合わせることで、効率的な末梢循環向上に貢献できると考える。
ISSN:1347-443X
1881-4379
DOI:10.11239/jsmbe.Annual62.179_1