耳小骨を介した可聴域外超音波刺激が惹起するモルモット蝸牛Hook regionの上皮帯のナノ振動

一般にヒトは鼓膜を介した「気導」刺激において20 kHzまでの音を聴くことができる。一方、骨を介して音を入力する「骨導」刺激を用いると20 kHzより高い周波数の超音波を聴取できる。すなわち、鼓膜を介する「気導」と骨を介する「骨導」で受容できる音の周波数が異なるが、そのメカニズムとして鼓膜の物性が主に検討されており、中耳耳小骨の物性などの要因については十分に検討されていない。我々はこれまでに蝸牛内の超音波受容領域を探索するために、in vivoモルモットの側頭骨に対して、可聴域外とされる100 kHz付近の超音波刺激を行った結果、蝸牛の最も入口に位置するHook regionの感覚上皮帯におい...

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Published in生体医工学 Vol. Annual62; no. Abstract; p. 239_1
Main Authors 堀井, 和広, 小川, 博史, 長瀬, 典子, 森元, 伊織, 任, 書晃
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本生体医工学会 2024
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Summary:一般にヒトは鼓膜を介した「気導」刺激において20 kHzまでの音を聴くことができる。一方、骨を介して音を入力する「骨導」刺激を用いると20 kHzより高い周波数の超音波を聴取できる。すなわち、鼓膜を介する「気導」と骨を介する「骨導」で受容できる音の周波数が異なるが、そのメカニズムとして鼓膜の物性が主に検討されており、中耳耳小骨の物性などの要因については十分に検討されていない。我々はこれまでに蝸牛内の超音波受容領域を探索するために、in vivoモルモットの側頭骨に対して、可聴域外とされる100 kHz付近の超音波刺激を行った結果、蝸牛の最も入口に位置するHook regionの感覚上皮帯において超音波の周波数と一致した振動が惹起されることを確認した。そこで本研究では、耳小骨が超音波を伝達できるのか否かを検討するために、従来検討されてきた鼓膜を回避して耳小骨に直接振動子を押し当てる「耳小骨刺激」を用いて超音波刺激を行った。その上で、Hook regionの上皮帯における超音波振動を計測した。その結果、耳小骨刺激においても骨導刺激時と同様に上皮帯の超音波振動が惹起された。また刺激圧力を増加させると、振幅も増加したが、その入出力関係には「非線形性」も観測できた。これらの結果から、気導と骨導における受容可能な周波数の差は、主に鼓膜の物性に起因し、耳小骨の物性の寄与は少ないと考えられた。
ISSN:1347-443X
1881-4379
DOI:10.11239/jsmbe.Annual62.239_1