実験室的方法によるHIV感染者のフォローアップ その1: ウイルス分離は発症予測に有用である

HIV-1感染者54名 (観察開始時AC44名, ARC, AIDS10名) を対象として, 経時的なウイルス分離と免疫学的検索を行い, それらが発症の予知に寄与する程度について検討した.その結果, 37名 (同AC27名, ARC, AIDS10名) より132株のHIV-1が分離された.ウイルス分離率は無症候性キャリア (AC) では60%であったのに対して有症者 (ARC, AIDS) では100%と高率であった.またACの中ではCD4+数を維持しているグループと低下グループの分離率は, それぞれ54.5および95.9%であった.また病態が進行するにしたがって, ウイルス分離に必要な培養...

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Published in感染症学雑誌 Vol. 70; no. 4; pp. 338 - 346
Main Authors 大竹, 徹, 森, 治代, 森本, 素子, 川畑, 拓也, 上羽, 昇, 大久保, 進, 安永, 幸二郎, 永尾, 暢夫, 大久保, 康人, 佐野, 浩一, 中野, 隆史, 中井, 益代
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本感染症学会 20.04.1996
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Summary:HIV-1感染者54名 (観察開始時AC44名, ARC, AIDS10名) を対象として, 経時的なウイルス分離と免疫学的検索を行い, それらが発症の予知に寄与する程度について検討した.その結果, 37名 (同AC27名, ARC, AIDS10名) より132株のHIV-1が分離された.ウイルス分離率は無症候性キャリア (AC) では60%であったのに対して有症者 (ARC, AIDS) では100%と高率であった.またACの中ではCD4+数を維持しているグループと低下グループの分離率は, それぞれ54.5および95.9%であった.また病態が進行するにしたがって, ウイルス分離に必要な培養期間は短縮し, 分離株のT細胞株 (MT-4細胞) への感染性を有するものの比率は増加した.これらの所見から, 病態の進行と共に体内のウイルスの性質は, 増殖が早くT細胞へ感染性を有するいわゆる毒力の高いタイプへと変化することが示された.コホート研究において, 毒力の高いウイルスが検出された例では, 1年以内に発症したもの, AZT投与により一時的にCD4+数の回復が見られたもののARCまで進行したもの, またCD4+数の急速な低下が見られたものなど, 全てにおいて病態の進行が見られた.それに対し, 毒力の低いウイルスを持つものでは長期にわたって比較的高いCD4+数を維持した.このことから, 毒力の高いウイルスの検出は発症の予知において最も信頼度の高いマーカーとなることが示唆された.また血漿中のHIV-1抗原検出, およびコア抗体の減弱も病態の進行と関連していたが, ウイルス分離よりも予知マーカーとしての信頼性は低いものと思われた.
ISSN:0387-5911
1884-569X
DOI:10.11150/kansenshogakuzasshi1970.70.338