顎関節クローズド・ロック症例における関節腔内病変の関節鏡視所見について

顎関節クローズド・ロック症例における顎関節腔内病変の種類, 頻度, 部位, 程度を明らかにする目的で, 臨床的に顎関節クローズド・ロックと診断した39名54関節の鏡視所見を検討した。滑膜炎所見は51関節 (94%) に認められた。滑膜炎は, 後方滑膜で93%と特に高頻度であったが, 前方滑膜, 内側滑膜でもそれぞれ73%, 70%と比較的高頻度に認められた。癒着は42関節 (78%) に認められた。部位別では, 前方腔が62%と高頻度で, その他の部位は30%前後であった。形状は, 前方腔や外側部では壁状や襞状が多く, 後方腔, 内側部では襞状, 索状が多かった。滑膜炎を呈する症例の約半数にお...

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Published in日本顎関節学会雑誌 Vol. 4; no. 3; pp. 403 - 416
Main Authors 戸塚, 靖則, 津山, 昌嗣, 佐藤, 淳, 由良, 晋也, 中村, 武之, 福田, 博, 山口, 泰彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本顎関節学会 20.01.1993
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Summary:顎関節クローズド・ロック症例における顎関節腔内病変の種類, 頻度, 部位, 程度を明らかにする目的で, 臨床的に顎関節クローズド・ロックと診断した39名54関節の鏡視所見を検討した。滑膜炎所見は51関節 (94%) に認められた。滑膜炎は, 後方滑膜で93%と特に高頻度であったが, 前方滑膜, 内側滑膜でもそれぞれ73%, 70%と比較的高頻度に認められた。癒着は42関節 (78%) に認められた。部位別では, 前方腔が62%と高頻度で, その他の部位は30%前後であった。形状は, 前方腔や外側部では壁状や襞状が多く, 後方腔, 内側部では襞状, 索状が多かった。滑膜炎を呈する症例の約半数においては滑膜表面は白色の薄膜で覆われており, この薄膜が癒着の形成と何らかの関係を有しているように思われた。関節結節表面は関節鏡穿刺直後の鏡視では異常所見に乏しかったが, 約80%の症例では鏡視中に表面被膜が剥離し, フィブリレーション状の変化ないし骨露出を生じた。関節円板の変形や穿孔はしばしば認められたが, フィブリレーション状の変化は明らかではなかった。関節結節ならびに下顎窩には比較的高頻度に血管が認められた。関節円板の転位が認められなかった2例の上関節腔内にはともに癒着が存在し, 円板の可動性は低下していた。
ISSN:0915-3004
1884-4308
DOI:10.11246/gakukansetsu1989.4.403