シロスタゾールにより心拍数の増加と日常生活動作能力の向上を認めた洞機能不全症候群の一例
症例は86歳, 男性. 高血圧症に対しカルシウム拮抗薬の内服治療中であったが徐脈の原因となる薬剤の服用歴はなかった. 平成10年1月, 初診時の12誘導心電図で洞性徐脈と完全右脚+左脚前枝ブロックを認め, 精査治療目的で入院となった. ホルター心電図検査では一日総心拍数の減少 (74,182/日) と2秒以上の心停止 (187/日) を認めた. 電気生理学的検査では修正洞結節機能回復時間の延長(5,820msec, 刺激頻度130/分) とHV時間の延長 (80msec) を認めた. 以上の検査所見より洞機能不全症候群 (Rubenstein II型) と診断した. 入院時の日常生活動作能力は...
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Published in | 日本老年医学会雑誌 Vol. 36; no. 8; pp. 561 - 564 |
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Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本老年医学会
25.08.1999
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Summary: | 症例は86歳, 男性. 高血圧症に対しカルシウム拮抗薬の内服治療中であったが徐脈の原因となる薬剤の服用歴はなかった. 平成10年1月, 初診時の12誘導心電図で洞性徐脈と完全右脚+左脚前枝ブロックを認め, 精査治療目的で入院となった. ホルター心電図検査では一日総心拍数の減少 (74,182/日) と2秒以上の心停止 (187/日) を認めた. 電気生理学的検査では修正洞結節機能回復時間の延長(5,820msec, 刺激頻度130/分) とHV時間の延長 (80msec) を認めた. 以上の検査所見より洞機能不全症候群 (Rubenstein II型) と診断した. 入院時の日常生活動作能力は Barthel インデックス30点であった. 徐脈による明らかな自他覚症状がなく, 人工ペースメーカ植え込みに対する患者の同意が得られなかったため保存的治療を選択した. まずβ刺激剤の硫酸オルシプレナリン (30mg/日) を経口投与したが心拍数の増加はなかった. そこでシロスタゾール100mg/日の経口投与を開始したところ, 2週間後には一日総心拍数の増加 (85,642/日) とともに日常生活動作能力の改善を認めた (Barthel インデックス55点). 人工ペースメーカー植え込みの絶対適応でない高齢徐脈性不整脈患者に対しシロスタゾールは保存的治療法の第一選択薬として試みる価値があると思われた. |
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ISSN: | 0300-9173 |
DOI: | 10.3143/geriatrics.36.561 |