化学療法誘発性末梢神経障害に対する没入型Virtual Reality ガイド下リハビリテーション治療併用の在宅を基盤とする運動療法の試み

【はじめに】化学療法誘発性末梢神経障害(以下,CIPN)は,発症率の高い有害事象の一つであるが,現時点で確立された治療法がなく臨床上の問題となっている。今回我々は,CIPN に対して座位での没入型Virtual Reality ガイド下リハビリテーション治療(以下,VR ガイド下練習)を併用した在宅を基盤とする運動療法を実施したため報告する。【症例紹介】対象は40 歳代の女性。子宮体癌Stage Ⅳ B と卵巣癌StageⅠA またはStage Ⅳ B の重複癌に対する外科的治療後に,パクリタキセル・カルボプラチン療法が施行されCIPN が出現。パクリタキセル投与終了後1 カ月経過するもCIP...

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Published inPAIN REHABILITATION p. 15
Main Authors 吉田 寛和, 保坂 陽介, 水野 耕平, 宮田 知恵子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本ペインリハビリテーション学会 2025
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ISSN2186-2702
2759-3355
DOI10.60411/painrehabilitation.15

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Summary:【はじめに】化学療法誘発性末梢神経障害(以下,CIPN)は,発症率の高い有害事象の一つであるが,現時点で確立された治療法がなく臨床上の問題となっている。今回我々は,CIPN に対して座位での没入型Virtual Reality ガイド下リハビリテーション治療(以下,VR ガイド下練習)を併用した在宅を基盤とする運動療法を実施したため報告する。【症例紹介】対象は40 歳代の女性。子宮体癌Stage Ⅳ B と卵巣癌StageⅠA またはStage Ⅳ B の重複癌に対する外科的治療後に,パクリタキセル・カルボプラチン療法が施行されCIPN が出現。パクリタキセル投与終了後1 カ月経過するもCIPN に改善なく,不安を覚えたため当外来紹介受診。初診評価時,Visual Analogue Scale(VAS)−痺れ(mm)40/100,Common Terminology Criteria for Adverse Events(CTCAE)version.4.0 Grade2 のCIPN,全般的な身体機能や生活の質(以下,QOL)の低下を認めた。【経過】外来通院加療に合わせて在宅を基盤とする運動療法(外来にてリハビリテーション専門職監督下で実施する運動療法と自宅で実施するセルフエクササイズ)を開始し,神経症状や身体機能,QOLに改善がみられた。介入開始後130 日から166 日には,痺れや姿勢制御の改善を主目的に座位でのVRガイド下練習(1 回約20 分,週1 回,計6 回)を併用し,その前後比較(前vs. 後)では,VAS−痺れ(mm)37/100 → 14/100,片脚立位時間(右/ 左,秒)11.5 → 52.5 / 3.8 → 19.1 と痺れの軽減および顕著な姿勢制御の改善がみられ,QOL の更なる向上も認めた。リハビリテーション治療終了後の翌週より復職し,公共交通機関での通勤も可能となった。【考察】原因薬剤中止後も遷延するCIPN に対し, VR ガイド下練習を併用した在宅を基盤とする運動療法を実施した結果,神経症状,身体機能およびQOL の改善が認められた。本プログラムはCIPN に対し有効である可能性がある。
ISSN:2186-2702
2759-3355
DOI:10.60411/painrehabilitation.15