トーダイト, 5Al2O3・H2Oの生成条件
アルミナおよびアルミナ水和物には多くの多形が存在するが, Al2O3-H2O系の状態図にあらわれる相は, ギブサイト, ベーマイト, ダイアスポア, コランダムのみであった. 著者らは, この状態図のコランダム安定領域で新しいアルミナの多形, トーダイトを見出しその結晶学的な研究を行なって来たが, 本報ではこの新相の諸種の合成法と鉱化剤の役割について研究した結果を報告する. 実験は2系列にわけられる. 第1は, ギブサイトから得たベーマイトを出発原料とし各種の鉱化剤の存在下でトーダイトを合成するものである. 第2は, 第1の実験で鉱化剤の効果を認められたものを加えずに, 各種のアルミナおよびア...
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Published in | 窯業協會誌 Vol. 74; no. 847; pp. 84 - 89 |
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Main Authors | , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
公益社団法人 日本セラミックス協会
01.03.1966
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Summary: | アルミナおよびアルミナ水和物には多くの多形が存在するが, Al2O3-H2O系の状態図にあらわれる相は, ギブサイト, ベーマイト, ダイアスポア, コランダムのみであった. 著者らは, この状態図のコランダム安定領域で新しいアルミナの多形, トーダイトを見出しその結晶学的な研究を行なって来たが, 本報ではこの新相の諸種の合成法と鉱化剤の役割について研究した結果を報告する. 実験は2系列にわけられる. 第1は, ギブサイトから得たベーマイトを出発原料とし各種の鉱化剤の存在下でトーダイトを合成するものである. 第2は, 第1の実験で鉱化剤の効果を認められたものを加えずに, 各種のアルミナおよびアルミナ水和物を出発原料としてトーダイトを合成する実験である. 第1の場合には数種の弗化物 (AlF3, NaF, KF) がトーダイト生成に極めて有効であり, Ti(SO4)2がこれに次ぐ効果を持つことがわかった. これらの鉱化剤を用いないときはギブサイトから得たベーマイトからは, トーダイトの痕跡も生成しない. このため, トーダイトの生成に鉱化剤の存在が不可欠であるかどうかの疑問が生ずるので, 第2の系の実験を行なった. この結果は, 次のようにまとめられる. a) χ, κ-アルミナからは, 比較的低温でトーダイトが生成する. 前者からは100%のトーダイトを得るが, 後者はコランダムの生成も協奏反応である. b) ρ-アルミナもトーダイトとコランダムになる. c) 純トーダイトを得るにはη-アルミナが最適である. しかし, η-アルミナから得られたθ-アルミナからはトーダイトは得られない. d) ギブサイトから得たγ-アルミナはトーダイトに変成しないのに, バイヤライトから得たγ-アルミナはトーダイトに変成する. e) トーダイトがコランダムに変化する速度は小さく種子コランダムが必要である. しかし, 状態図におけるコランダム安定領域はトーダイトの準安定領域であることは確かである. 鉱化剤としての弗素の効果は, コランダム核の生成の抑制剤であることに起因していることが, コランダムとベーマイトの共存出発原料を用い, 弗素作用下の実験で明らかになった. 弗素がトーダイトに固溶しているかどうかは判明しないが, Tiイオンは固溶することは確かであり, Mg++, Ca++, Cd++もバイヤライト合成時に混入させれば, トーダイトに固溶し構造を安定化している. CuSO4は弱い鉱化剤としてはたらく. |
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ISSN: | 0009-0255 1884-2127 |
DOI: | 10.2109/jcersj1950.74.847_84 |