慢性硬膜下血腫における臨床症状と血腫量および局所脳血流量の関係

慢性硬膜下血腫(以下CSH)における臨床症状の発現機序として, 徐々に増大する血腫のmass effectと血腫下脳実質の浮腫4, 5)が挙げられる. 臨床症状として頭痛などの頭蓋内圧亢進症状と片麻痺, 意識障害および精神症状などの神経症状を認めるが, 従来より臨床症状24, 28, 29)および血腫の厚さ7)には発症年齢により著しい差の存在することが指摘されている. すなわち, 若年者は頭蓋内圧亢進症状, 老人は神経症状で発症することが多く, 血腫の厚さも年齢とともに増大する7). CSHにおいては, 増大する血腫がある量(臨界値)を越えたとき, 臨床症状が発現し進行すると考えられる. これ...

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Published inNeurologia medico-chirurgica Vol. 24; no. 11; pp. 869 - 875
Main Authors 池田清延, 加納昭彦, 早瀬秀男, 山嶋哲盛, 伊藤治英, 山本信二郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本脳神経外科学会 01.01.1984
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Summary:慢性硬膜下血腫(以下CSH)における臨床症状の発現機序として, 徐々に増大する血腫のmass effectと血腫下脳実質の浮腫4, 5)が挙げられる. 臨床症状として頭痛などの頭蓋内圧亢進症状と片麻痺, 意識障害および精神症状などの神経症状を認めるが, 従来より臨床症状24, 28, 29)および血腫の厚さ7)には発症年齢により著しい差の存在することが指摘されている. すなわち, 若年者は頭蓋内圧亢進症状, 老人は神経症状で発症することが多く, 血腫の厚さも年齢とともに増大する7). CSHにおいては, 増大する血腫がある量(臨界値)を越えたとき, 臨床症状が発現し進行すると考えられる. これまで血腫のmass effectの指標として血管写上の無血管野の厚さや前大脳動脈の偏位の程度, CTスキャン上のmidline shiftの程度などと臨床症状との相関を検索した報告9, 25)はあるが, 発症の際の血腫量の臨界値に関する詳細な報告はない. 我々は, CTスキャンにより血腫の存在が確認され手術によりCSHと診断された65症例につき, CTスキャン像より半自動像解析装置を用いて血腫量を算出し, 一部症例において^133 Xe吸入法により局所脳血流量(以下r-CBF)を測定した. これらの成績を基に発症時の血腫量の臨界値を求め, これとr-CBFの成績よりCSHの臨床症状の発現機序につき検索した.
ISSN:0470-8105
DOI:10.2176/nmc.24.869