幼児における周術期の糖の投与と代謝に関する研究

「緒言」生理的状況下では, グルコースと脂肪酸は, 生体の主なエネルギー源である. 飢餓時や運動時には, 貯蔵されたグリコーゲンが動員され, 代謝されてグルコースを生成する(糖新生). さらに肝臓では脂肪分解が促進され, 主に脂肪酸のβ-酸化によってケトン体(アセト酢酸またはβ-ヒドロキシ酪酸)が生成される. 生成されたケトン体は, 脳や末梢組織で利用されるエネルギー源となる. しかし, ケトン体濃度が過剰に上昇すると, ケトアシドーシスをきたし非生理的状態に陥る. 術前の絶飲食ガイドラインでは, 「軽食は麻酔導入8時間前まで, 清澄水の摂取は2時間前まで安全である. 」とされている. これは...

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Published in神奈川歯学 Vol. 55; no. 1; pp. 68 - 75
Main Authors 衣川智子, 森本佳成, 林恵美, 飯田貴俊
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 神奈川歯科大学学会 30.06.2020
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ISSN0454-8302

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Summary:「緒言」生理的状況下では, グルコースと脂肪酸は, 生体の主なエネルギー源である. 飢餓時や運動時には, 貯蔵されたグリコーゲンが動員され, 代謝されてグルコースを生成する(糖新生). さらに肝臓では脂肪分解が促進され, 主に脂肪酸のβ-酸化によってケトン体(アセト酢酸またはβ-ヒドロキシ酪酸)が生成される. 生成されたケトン体は, 脳や末梢組織で利用されるエネルギー源となる. しかし, ケトン体濃度が過剰に上昇すると, ケトアシドーシスをきたし非生理的状態に陥る. 術前の絶飲食ガイドラインでは, 「軽食は麻酔導入8時間前まで, 清澄水の摂取は2時間前まで安全である. 」とされている. これは, 長時間の絶飲食と比較して胃内容液量は不変かあるいは減少し, 胃内容液pHはすべての研究において変わらないことから, 誤嚥の危険性は増加しないからである.
ISSN:0454-8302