下顎運動アニメーションを用いた咀嚼時の顎関節空隙の計測 - 顎変形症者における検討

「緒言」顎関節は, 回転と滑走を伴う生体の中で最も複雑な運動を担う滑膜性の関節であり, ポステリアーガイダンスとして上下の歯の咬合接触によるアンテリアーガイダンスとともに下顎運動を制御する. 顎関節の軟骨層は, コラーゲン線維の三次元メッシュワークとアグリカンと呼ばれる軟骨型プロテオグリカンにより構成されており, 機能圧が加わっていない安静時には構造水を保持している. 下顎運動時に軟骨層に機能圧が加わると関節軟骨特有の粘弾性を発揮し, 間歇的な強い負荷を分散し軟骨下骨層への応力を緩衝する. このような関節機構の恒常性の維持には, 軟骨層の細胞外基質を合成し代謝する細胞の健全性が不可欠である....

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in神奈川歯学 Vol. 55; no. 1; pp. 43 - 56
Main Authors 金田用将, 尾崎博弥, 不島健持
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 神奈川歯科大学学会 30.06.2020
Online AccessGet full text
ISSN0454-8302

Cover

More Information
Summary:「緒言」顎関節は, 回転と滑走を伴う生体の中で最も複雑な運動を担う滑膜性の関節であり, ポステリアーガイダンスとして上下の歯の咬合接触によるアンテリアーガイダンスとともに下顎運動を制御する. 顎関節の軟骨層は, コラーゲン線維の三次元メッシュワークとアグリカンと呼ばれる軟骨型プロテオグリカンにより構成されており, 機能圧が加わっていない安静時には構造水を保持している. 下顎運動時に軟骨層に機能圧が加わると関節軟骨特有の粘弾性を発揮し, 間歇的な強い負荷を分散し軟骨下骨層への応力を緩衝する. このような関節機構の恒常性の維持には, 軟骨層の細胞外基質を合成し代謝する細胞の健全性が不可欠である. 軟骨層が無血管性であることより, 軟骨層の細胞への栄養は関節腔の滑液と軟骨層の構造水の拡散移動により供給され, そのため咀嚼など下顎機能時に関節軟骨層に間歇的に加わる生理的負荷が決定的に重要である.
ISSN:0454-8302