一過性に錐体外路症状を呈したBudd-Chiari症候群の1例

下大静脈および肝静脈の閉塞を伴ない一過性に著明な精神神経症状を呈した症例を呈示する. 患者は38歳の女性で, 10年以上にわたり胸腹部の静脈怒脹がみられたが, 発熱につづいて突然アテトーゼ様運動, 知能低下, 動作の鈍さ, 構語障害および歩行障害が出現した. これらの症状は9ヶ月持続し自然に寛解した. 下大静脈および肝静脈造影により両者の完全閉塞が証明された. このような特異な神経学的異常が出現した原因は, おそらく, アンモニアを含む何らかの有毒因子による神経系の機能的および器質的障害にもとづくものであることが推測された. 「はじめに」肝静脈の閉塞に起因する症候群をBudd-Chiari症候...

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Published in川崎医学会誌 Vol. 2; no. 1; pp. 53 - 58
Main Authors 山本晋一郎, 宮崎真佐男, 寺尾 章, 大橋勝彦, 平野 寛
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 川崎医学会 30.06.1976
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Summary:下大静脈および肝静脈の閉塞を伴ない一過性に著明な精神神経症状を呈した症例を呈示する. 患者は38歳の女性で, 10年以上にわたり胸腹部の静脈怒脹がみられたが, 発熱につづいて突然アテトーゼ様運動, 知能低下, 動作の鈍さ, 構語障害および歩行障害が出現した. これらの症状は9ヶ月持続し自然に寛解した. 下大静脈および肝静脈造影により両者の完全閉塞が証明された. このような特異な神経学的異常が出現した原因は, おそらく, アンモニアを含む何らかの有毒因子による神経系の機能的および器質的障害にもとづくものであることが推測された. 「はじめに」肝静脈の閉塞に起因する症候群をBudd-Chiari症候群と総称し, とくに原発性の肝静脈のみの閉塞をChiari病と呼称している. 本邦においては肝静脈の病変に下大静脈閉塞を合併する頻度が多く「肝部下大静脈膜様閉塞症」と呼ばれている. 今回われわれは多彩な精神神経症状を呈したBudd-Chiari症候群の一例を経験し, とくに錐体外路症状を呈した点が従来の報告例と異なり興味深いと思われたので報告する.
ISSN:0386-5924
DOI:10.11482/KMJ-J2(1)53