歯冠歯根統合モデルを用いた歯の移動の三次元解析 : 一塊遠心移動法による上顎臼歯部の評価

「緒言」三次元的な歯の移動の標準装置として, マルチブラケット装置が広く臨床応用されているが, 臼歯部の遠心移動を行う上でマルチブラケット法にはいくつかの欠点があると考えられる. 第一に, マルチブラケット装置は, ワイヤーとブラケットスロット間に一定の遊びが存在することにより, 側方歯の遠心傾斜を引き起こす. 側方歯がそれぞれ遠心傾斜することで, ワイヤーとブラケットスロット間の摩擦が大きくなり, 歯の移動効率を抑制する懸念がある. また, 遠心への傾斜移動は歯根膜の遠心歯頸部や近心根尖部などへの応力集中により硝子様変性を引き起こすと考えられ, 効率的な歯の移動を阻害する可能性がある. われ...

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Published in神奈川歯学 Vol. 55; no. 1; pp. 16 - 28
Main Authors 北園優歩, 小林優, 不島健持
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 神奈川歯科大学学会 30.06.2020
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Summary:「緒言」三次元的な歯の移動の標準装置として, マルチブラケット装置が広く臨床応用されているが, 臼歯部の遠心移動を行う上でマルチブラケット法にはいくつかの欠点があると考えられる. 第一に, マルチブラケット装置は, ワイヤーとブラケットスロット間に一定の遊びが存在することにより, 側方歯の遠心傾斜を引き起こす. 側方歯がそれぞれ遠心傾斜することで, ワイヤーとブラケットスロット間の摩擦が大きくなり, 歯の移動効率を抑制する懸念がある. また, 遠心への傾斜移動は歯根膜の遠心歯頸部や近心根尖部などへの応力集中により硝子様変性を引き起こすと考えられ, 効率的な歯の移動を阻害する可能性がある. われわれは, 口蓋に適用する歯科矯正用アンカースクリューを併用し, 上顎臼歯部を一塊として遠心移動を行う新しい方法(一塊遠心移動法)を考案した.
ISSN:0454-8302