ダッシュボード損傷による外傷性気管断裂の1例

「抄録」鈍的外傷に起因した頸部気管損傷は比較的稀な外傷であり, 一般的に緊急で気道を確保しないと致命的である. 今回, 我々はダッシュボード損傷による頸部気管断裂をきたした重症外傷の1救命例を経験したので報告する. 症例は21歳の女性. 車の助手席に乗車中, 交通事故にて受傷した. 心肺停止状態で前医に搬送され蘇生処置に反応したために当院紹介となった. 来院時JCS 300, バイタルサインは安定しており, 診察上は前頚部に擦過傷を認めたのみであった. その際の画像検査で頸部気管断裂と診断されたが, 気道開通は得られており換気可能であったために早急に気管再建術を施行しなかった. その後, 待機...

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Published in川崎医学会誌 Vol. 42; no. 1; pp. 1 - 9
Main Authors 宮地隆, 宮地啓子, 竹原延治, 山田祥子, 高橋治郎, 堀田敏弘, 井上貴博, 椎野泰和, 荻野隆光
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 川崎医学会 2016
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Summary:「抄録」鈍的外傷に起因した頸部気管損傷は比較的稀な外傷であり, 一般的に緊急で気道を確保しないと致命的である. 今回, 我々はダッシュボード損傷による頸部気管断裂をきたした重症外傷の1救命例を経験したので報告する. 症例は21歳の女性. 車の助手席に乗車中, 交通事故にて受傷した. 心肺停止状態で前医に搬送され蘇生処置に反応したために当院紹介となった. 来院時JCS 300, バイタルサインは安定しており, 診察上は前頚部に擦過傷を認めたのみであった. その際の画像検査で頸部気管断裂と診断されたが, 気道開通は得られており換気可能であったために早急に気管再建術を施行しなかった. その後, 待機的に気管切開術と気管断端処理を行い救命できた. 本症例を経験し, 力学的作用の面から受傷機転を考察するとともに, 頸部気管断裂に対する治療戦略について文献的検討を加えて考察したので報告する. 「はじめに」交通事故などの鈍的外傷による頸部気管断裂は稀である.
ISSN:0386-5924