伏在神経膝蓋下枝の走行について

「はじめに」伏在神経膝蓋下枝の絞扼性障害は日常よく見られるし, よく治る疾患である. その多くは縫工筋後縁での障害と考えていたが, 注意して診ていると縫工筋筋部での障害も稀ではない. この問題を考えるために膝蓋下枝と縫工筋の関係を調査したのでその結果を報告する. 対象 福岡大学医学部解剖学教室の学生解剖用ホルマリン固定屍体で大腿部に異常がなく, 膝蓋下枝の走行を追求できた35肢と切断肢1肢の計36肢を用いた. 大腿遠位内側で内転筋管(Hunter管)を出た膝蓋下枝が皮下に出るまでの走行と縫工筋の関係を調べた. 結果 伏在神経膝蓋下枝が縫工筋後縁を回り, 筋表面を前方に向かうもの15肢(41.7...

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Published in整形外科と災害外科 Vol. 46; no. 3; pp. 838 - 840
Main Authors 松永和剛, 松崎昭夫, 荒牧保弘
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 西日本整形・災害外科学会 1997
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ISSN0037-1033

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Summary:「はじめに」伏在神経膝蓋下枝の絞扼性障害は日常よく見られるし, よく治る疾患である. その多くは縫工筋後縁での障害と考えていたが, 注意して診ていると縫工筋筋部での障害も稀ではない. この問題を考えるために膝蓋下枝と縫工筋の関係を調査したのでその結果を報告する. 対象 福岡大学医学部解剖学教室の学生解剖用ホルマリン固定屍体で大腿部に異常がなく, 膝蓋下枝の走行を追求できた35肢と切断肢1肢の計36肢を用いた. 大腿遠位内側で内転筋管(Hunter管)を出た膝蓋下枝が皮下に出るまでの走行と縫工筋の関係を調べた. 結果 伏在神経膝蓋下枝が縫工筋後縁を回り, 筋表面を前方に向かうもの15肢(41.7%)縫工筋筋腹を貫通して筋表面を前方に走るもの19肢(52.8%)(図1), 2本に分岐し, レベルを違えて2本共に筋腹を貫通し筋表面を前方に走るもの1肢(2.8%)(図2), 2本に分岐し1本は筋腹を貫通し, 他は筋後縁を回って筋表面に出るもの1肢(2.8%)であった. 膝蓋下枝が筋下面を前方に向かうものは見なかった. また筋を貫通する例でも遠位の腱部を貫通するものはなかった. 考察 伏在神経膝蓋下枝は縫工筋又は同筋腱部を貫通するか, 縫工筋後縁を回り同筋表面を前方に向かうか, 縫工筋下を同筋に覆われて前方に向かうかのいずれかの走行をとり, 大腿筋膜を貫き膝蓋骨内下部に至り, その部位の皮膚知覚を支配する1)5).
ISSN:0037-1033