前下小脳動脈循環障害の内耳機能に及ぼす影響について

日常診療において, めまい・耳鳴・難聴の原因に循環障害が考えられるために, 血管拡張剤や循環改善剤を治療として用いる例は少なくない. しかし, 脳血管撮影やCTなどの画像診断で, 異常所見を実際に同定できる例は少数にとどまる. 通常内耳の血流は前下小脳動脈によって供給されているが, 前下小脳動脈の障害で定型的な症状がそろうことは少なく, 末梢内耳の疾患との鑑別が困難な場合もありうる. こうした前下小脳動脈領域の血流障害が, 内耳機能におよぼす影響について検討する目的で, 今回ネコを用いて動脈の閉塞時の蝸電図変化を調べた. ところで, 内耳動脈閉塞の蝸牛への影響についての過去の報告をみると, モ...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本耳鼻咽喉科学会会報 Vol. 92; no. 11; pp. 1863 - 2011
Main Authors 伊藤久子, 野末道彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本耳鼻咽喉科学会 20.11.1989
Online AccessGet full text
ISSN0030-6622

Cover

More Information
Summary:日常診療において, めまい・耳鳴・難聴の原因に循環障害が考えられるために, 血管拡張剤や循環改善剤を治療として用いる例は少なくない. しかし, 脳血管撮影やCTなどの画像診断で, 異常所見を実際に同定できる例は少数にとどまる. 通常内耳の血流は前下小脳動脈によって供給されているが, 前下小脳動脈の障害で定型的な症状がそろうことは少なく, 末梢内耳の疾患との鑑別が困難な場合もありうる. こうした前下小脳動脈領域の血流障害が, 内耳機能におよぼす影響について検討する目的で, 今回ネコを用いて動脈の閉塞時の蝸電図変化を調べた. ところで, 内耳動脈閉塞の蝸牛への影響についての過去の報告をみると, モルモットでは基底回転1)2)あるいは頂回転3)に障害がおこりやすいが, ネコでは頂回転4), と実験の報告者により一定しない. しかし, いずれも外有毛細胞が最も感受性が高いことでは一致をみている. 一方, 全身性であれ局所性であれ, 酸素欠乏条件下では蝸牛諸電位は抑制をみるが, そのうちでも聴神経活動電位(action potential;AP)は, 蝸牛マイクロホン電位(cochlear microphonics;CM)や蝸牛内直流電位(endocochlear DC potential;EP)に比べ, 鋭敏に反応することが知られている5).
ISSN:0030-6622