肝内胆管癌との鑑別に難渋した胆管周囲嚢胞(peribiliary cysts)の1切除例

「要旨」:肝内胆管癌との鑑別に難渋した胆管周囲嚢胞の1例を経験した. 症例は61歳男性. 飲酒を契機に大量腹水, 黄疸を呈し, 保存的加療で改善後に, CTで左肝内胆管の拡張が疑われ当院へ紹介となった. CTで明らかな腫瘤影は認めないものの, MRCP, ERCでB2, B3起始部胆管内に透亮像と, その末梢の拡張を認め胆管癌もしくは胆管周囲嚢胞による圧排が疑われ手術を行った. 術中超音波検査, 病理検査で胆管周囲嚢胞と診断し, 癌の併存は無いと判断して外側区域切除を施行した. 胆管周囲嚢胞は各種画像検査で診断可能と考えられるが, 胆管癌の存在の否定が困難と考えられた. 近年, 胆管周囲嚢胞は...

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Published in胆道 Vol. 26; no. 4; pp. 604 - 609
Main Authors 上月章史, 志摩泰生, 住吉辰朗, 岩田純
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本胆道学会 31.10.2012
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ISSN0914-0077

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Summary:「要旨」:肝内胆管癌との鑑別に難渋した胆管周囲嚢胞の1例を経験した. 症例は61歳男性. 飲酒を契機に大量腹水, 黄疸を呈し, 保存的加療で改善後に, CTで左肝内胆管の拡張が疑われ当院へ紹介となった. CTで明らかな腫瘤影は認めないものの, MRCP, ERCでB2, B3起始部胆管内に透亮像と, その末梢の拡張を認め胆管癌もしくは胆管周囲嚢胞による圧排が疑われ手術を行った. 術中超音波検査, 病理検査で胆管周囲嚢胞と診断し, 癌の併存は無いと判断して外側区域切除を施行した. 胆管周囲嚢胞は各種画像検査で診断可能と考えられるが, 胆管癌の存在の否定が困難と考えられた. 近年, 胆管周囲嚢胞は画像診断の発達とともに臨床的に認識され, 胆管周囲付属腺は胆管癌やIPNB(intraductal papillary neoplasm of the bile duct)の発生母地の観点から見直されていることから, 本症例は貴重な1切除例と考え若干の文献的考察を加えて報告する.
ISSN:0914-0077