I-cell病(ムコ脂質症II型)の1例
「はじめに」I-cell病は種々のリソゾーム酵素の成熟過程の異常症で,ムコ多糖症に類似した臨床像を呈する遺伝性疾患である.私達は5年間以上観察したI-cell病の1例を経験したので報告する.「症例」6歳 女児 家族歴:両親は健康で血族結婚ではない.3人姉妹の第3子で第1子は同じ病気で2歳11カ月で死亡し,第2子は健康女児である.現病歴:38週,2278gで出生.頚定は5カ月であったが,その後の発達がみられず,8カ月時久留米大学小児科を受診した.特有の顔貌,腰椎側弯,肝脾腫,両母指の屈曲,股関節の拘縮などが認められ,検査にてリソゾーム酵素活性の上昇がみられI-cell病の診断を受けた.1歳2カ月...
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Published in | 整形外科と災害外科 Vol. 46; no. 2; pp. 316 - 318 |
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Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
西日本整形・災害外科学会
1997
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ISSN | 0037-1033 |
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Summary: | 「はじめに」I-cell病は種々のリソゾーム酵素の成熟過程の異常症で,ムコ多糖症に類似した臨床像を呈する遺伝性疾患である.私達は5年間以上観察したI-cell病の1例を経験したので報告する.「症例」6歳 女児 家族歴:両親は健康で血族結婚ではない.3人姉妹の第3子で第1子は同じ病気で2歳11カ月で死亡し,第2子は健康女児である.現病歴:38週,2278gで出生.頚定は5カ月であったが,その後の発達がみられず,8カ月時久留米大学小児科を受診した.特有の顔貌,腰椎側弯,肝脾腫,両母指の屈曲,股関節の拘縮などが認められ,検査にてリソゾーム酵素活性の上昇がみられI-cell病の診断を受けた.1歳2カ月時に東海大学小児科で骨髄移植を受けている.9カ月時の血清リソゾーム酵素活性はβ-グルコシダーゼ以外の酵素活性の上昇がみられた(表1).現症:体重9950g,身長83.5cm,で体格は小さく,顔貌は眼球突出,鞍鼻,頬は紅潮し短頚であった.四肢の関節は拘縮しとくに肩関節,股関節では中等度以上の可動域制限がみられ,両母指は著明な屈曲拘縮がみられた.脊柱では側弯症,胸椎前弯,腰椎後弯が認められた.精神運動発達は著明に遅延し,寝返りは可能だが自動的に坐位はとれず理解力は2,3歳程度であった. |
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ISSN: | 0037-1033 |