B細胞初期分化障害としての無ガンマグロブリン血症

「I. はじめに」 近年, 進歩の著しい先天性免疫不全症のうち, 主に抗体産生不全状態を来す疾患は発生頻度が最も高く, 臨床的にも無(もしくは低)ガンマグロブリン血症として容易に把握できる. このような先天性抗体産生不全症は, 大きく, 末梢血におけるB細胞の比率が比較的正常なものと1%以下の極めて少ないものの2群に分けられる. 前者には, CVID(common variable immunodeficiency), 選択的IgA欠損症, 高IgM症候群, IgGサブクラス欠損症などの疾患が含まれる. 後者の末梢血B細胞を欠如する抗体産生不全症では, 男性例の場合, 一般的に, X連鎖(ブル...

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Published in日本臨床免疫学会会誌 Vol. 23; no. 5; pp. 435 - 444
Main Authors 宮脇利男, 金兼弘和, 二谷武
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床免疫学会 2000
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ISSN0911-4300

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Summary:「I. はじめに」 近年, 進歩の著しい先天性免疫不全症のうち, 主に抗体産生不全状態を来す疾患は発生頻度が最も高く, 臨床的にも無(もしくは低)ガンマグロブリン血症として容易に把握できる. このような先天性抗体産生不全症は, 大きく, 末梢血におけるB細胞の比率が比較的正常なものと1%以下の極めて少ないものの2群に分けられる. 前者には, CVID(common variable immunodeficiency), 選択的IgA欠損症, 高IgM症候群, IgGサブクラス欠損症などの疾患が含まれる. 後者の末梢血B細胞を欠如する抗体産生不全症では, 男性例の場合, 一般的に, X連鎖(ブルトン型)無ガンマグロブリン血症(XLA)として診断されることが多い. 1993年, 二つのグループによりXLAの責任遺伝子Bruton's tyrosine kinase(Btk)が発見され, 無ガンマグロブリン血症男性の大部分にBtk遺伝子変異が同定されている1, 2). XLAの基本病態は, Btkの機能異常によるB前駆細胞から成熟B細胞への分化障害にある.
ISSN:0911-4300