慢性硬膜下水腫を伴った中頭蓋窩クモ膜嚢腫の開放術直後に多発性脳内出血を生じた1例

中頭蓋窩クモ膜嚢腫に硬膜下血腫あるいは硬膜下水腫を合併する場合があることはしばしば報告されており, 通常その治療方針は開頭による血腫または水腫の除去と嚢腫の開放が言われている3, 9, 14, 17). 今回我々は, 硬膜下水腫を合併した中頭蓋窩クモ膜嚢腫の開放術直後に, テント上下にわたって多発性に脳内出血を生じた成人例を経験した. このような術後合併症はまれであり, 貴重な症例と考えられたので, その発生機序ならびに予防方法について若干の考察を加えて報告する. 症例 〈患者〉49才, 男性 主訴:頭痛, 嘔気, 嘔吐 家族歴:特記事項なし 既往歴:10年前より左耳鳴, 聴力低下あり. 高血...

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Published inNeurologia medico-chirurgica Vol. 29; no. 2; pp. 142 - 145
Main Authors 森宏, 寺林征, 北沢智二, 杉山義昭
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本脳神経外科学会 1989
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Summary:中頭蓋窩クモ膜嚢腫に硬膜下血腫あるいは硬膜下水腫を合併する場合があることはしばしば報告されており, 通常その治療方針は開頭による血腫または水腫の除去と嚢腫の開放が言われている3, 9, 14, 17). 今回我々は, 硬膜下水腫を合併した中頭蓋窩クモ膜嚢腫の開放術直後に, テント上下にわたって多発性に脳内出血を生じた成人例を経験した. このような術後合併症はまれであり, 貴重な症例と考えられたので, その発生機序ならびに予防方法について若干の考察を加えて報告する. 症例 〈患者〉49才, 男性 主訴:頭痛, 嘔気, 嘔吐 家族歴:特記事項なし 既往歴:10年前より左耳鳴, 聴力低下あり. 高血圧の既往なし. 頭部外傷の既往も認めず. 現病歴:1985年4月28日, 朝方より頭痛を自覚するようになり, 5月1日朝方には嘔吐も伴い, その後も頭痛が軽快しないため, 5月27日当科を受診した. 入院時所見:意識清明でうっ血乳頭は認められず, ほかにも神経学的陽性所見を認めなかった. また, 外観上頭蓋の変形も認められなかった.
ISSN:0470-8105