植物状態患者における下垂体前葉ホルモン分泌能の検討

近年, 脳蘇生術や心・肺機能, 水分代謝, 栄養などの全身管理術の進歩, また救急救命センター, 集中治療室の設置など, 医療施設の発達と, 老齢化社会への移行に伴い, 遷延性意識障害患者, いわゆる植物状態患者が増加するとともに, 長期間生存する傾向にある13). このような植物状態患者に対し, 臨床病理学的, 脳病態生理学的に研究が行われ, 多くの報告がなされているが, 系統的内分泌学的検討を行った報告はない. 一方, 我々は脳血管障害により発生する視床下部-下垂体前葉系の機能障害の病態を明らかにする目的で, 脳血管障害患者に対し系統的内分泌学的検討を行い, その結果について報告してきた1...

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Published inNeurologia medico-chirurgica Vol. 29; no. 6; pp. 490 - 495
Main Authors 吉本尚規, 魚住徹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本脳神経外科学会 1989
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ISSN0470-8105

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Summary:近年, 脳蘇生術や心・肺機能, 水分代謝, 栄養などの全身管理術の進歩, また救急救命センター, 集中治療室の設置など, 医療施設の発達と, 老齢化社会への移行に伴い, 遷延性意識障害患者, いわゆる植物状態患者が増加するとともに, 長期間生存する傾向にある13). このような植物状態患者に対し, 臨床病理学的, 脳病態生理学的に研究が行われ, 多くの報告がなされているが, 系統的内分泌学的検討を行った報告はない. 一方, 我々は脳血管障害により発生する視床下部-下垂体前葉系の機能障害の病態を明らかにする目的で, 脳血管障害患者に対し系統的内分泌学的検討を行い, その結果について報告してきた17-20). しかし, これらの報告は下垂体前葉機能検査を行いうる臨床的・時間的余裕のあった比較的軽症例での検討であり, 急激な重症脳損傷にて発症し, 「脳死」を免れた重症例において視床下部-下垂体前葉系の機能がどの程度の障害を受け, その障害がどのくらい持続し, どのような経過を辿るかはなお不明である. このような点を踏まえ, 今回我々は植物状態患者の視床下部-下垂体前葉系の機能障害の病態を明らかにする目的で, 本症患者に下垂体前葉機能検査を行い, その結果と諸種臨床的因子を比較検討したので報告する.
ISSN:0470-8105