造血幹細胞移植患者におけるシクロスポリンAとアゾール系抗真菌剤との相互作用の評価

「緒言」シクロスポリンA(CyA)は, 各種臓器移植時の拒絶反応の防止に用いられるが, 造血幹細胞移植時においては移植片対宿主病(Graft versus host disease: GVHD)を防止する目的で用いられる. GVHDは移植されたドナーのリンパ球が患者の組織を異物とみなし免疫学的に攻撃するもので, 症状は発熱, 皮膚症状, 肝機能障害, 消化器症状, 眼症状など多岐にわたる. 重篤なGVHDは治療を妨げ患者の生命を脅かすためその防止が必須であり, 特に移植直後に生じる急性GVHD防止のため, 移植直前よりCyAが投与される. CyAは強力な免疫抑制作用を示す一方で, その薬物動態...

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Published in医療薬学 Vol. 38; no. 11; pp. 688 - 693
Main Authors 黒松誠, 梶田貴司, 樽野麻依, 西川豊, 雪矢良輔, 飯岡大, 前迫善智, 中村文彦, 大野仁嗣, 上田睦明, 中塚英太郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本医療薬学会 10.11.2012
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ISSN1346-342X

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Summary:「緒言」シクロスポリンA(CyA)は, 各種臓器移植時の拒絶反応の防止に用いられるが, 造血幹細胞移植時においては移植片対宿主病(Graft versus host disease: GVHD)を防止する目的で用いられる. GVHDは移植されたドナーのリンパ球が患者の組織を異物とみなし免疫学的に攻撃するもので, 症状は発熱, 皮膚症状, 肝機能障害, 消化器症状, 眼症状など多岐にわたる. 重篤なGVHDは治療を妨げ患者の生命を脅かすためその防止が必須であり, 特に移植直後に生じる急性GVHD防止のため, 移植直前よりCyAが投与される. CyAは強力な免疫抑制作用を示す一方で, その薬物動態は個体間, 個体内での変動が大きく有効治療域も狭いため, 安全かつ有効な治療を行うためには治療薬物濃度モニタリング(TDM)が必要不可欠である. また, 肝臓や一部消化管に存在する薬物代謝酵素であるチトクロームP450(CYP)3A4やP糖タンパク質の基質であることから, これらを阻害する薬剤との併用により, その薬物動態が変動することが知られている.
ISSN:1346-342X