脳由来神経栄養因子 (BDNF) を用いた新しい歯周炎治療の開発

「緒言」 歯周炎は歯周病原細菌の感染とそれに対する宿主の免疫応答の結果, 歯周組織の破壊が起こる炎症性の疾患である. 近年, この持続的な細菌感染とそれによって引き起こされる慢性炎症は, 全身への内科的影響も大きく, 心疾患や脳血管疾患, 糖尿病, 非アルコール性脂肪性肝炎(NASH), 関節リウマチ, 低体重児早産など様々な全身疾患の発症や進行に関わることが明らかとなっている. 一般的な歯周炎治療として, ブラッシングやスケーリング・ルートプレーニングによる細菌バイオフィルムの除去が行われる. これによって炎症を軽減させることはできる. しかし, 喪失した歯槽骨や歯周靭帯の再生およびその機能...

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Published in日本歯周病学会会誌 Vol. 58; no. 3; pp. 91 - 97
Main Authors 武田克浩, 加治屋幹人, 松田真司, 柏井桂, 佐々木慎也, 水野智仁, 藤田剛, 栗原英見
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本歯周病学会 2016
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ISSN0385-0110

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Summary:「緒言」 歯周炎は歯周病原細菌の感染とそれに対する宿主の免疫応答の結果, 歯周組織の破壊が起こる炎症性の疾患である. 近年, この持続的な細菌感染とそれによって引き起こされる慢性炎症は, 全身への内科的影響も大きく, 心疾患や脳血管疾患, 糖尿病, 非アルコール性脂肪性肝炎(NASH), 関節リウマチ, 低体重児早産など様々な全身疾患の発症や進行に関わることが明らかとなっている. 一般的な歯周炎治療として, ブラッシングやスケーリング・ルートプレーニングによる細菌バイオフィルムの除去が行われる. これによって炎症を軽減させることはできる. しかし, 喪失した歯槽骨や歯周靭帯の再生およびその機能を回復することは難しく, 歯周炎の再発のリスクは残る. すなわち, 歯周組織欠損部に侵入した上皮によって, 歯周靭帯細胞などの歯周組織再生に必要な細胞が歯根面に遊走できなくなる. さらに破壊された歯周組織に感染した歯周病原細菌の排除は困難で, 慢性炎症が持続する.
ISSN:0385-0110