長時間の側臥に伴う視運動性眼振の適応
頭, 身体軸に対する重力方向の変化により視運動性眼振(OKN)が変化することが知られている. 今回我々は, 視運動性眼振で, 重力の方向情報の長時間の変化に対する, 情報処理と動眼出力系の適応に経時的な変動があるかどうかを, 健常被検者13名(実験群10名, 対照群3名)で検討した. 実験群は, 座位でOKNを記録後, 頭位を固定した側臥位を長時間とらせ, 更にその後座位に戻し, 経時的に(座位, 側臥直後, 2時間後, 4時間後, 座位復帰直後, 2時間後) OKNを記録することにより, 異なった重力の方向に適応していく状態を検討した. 対照群はすべて座位の状態で実験群と同じ時間経過に従いO...
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Published in | 日本耳鼻咽喉科学会会報 Vol. 101; no. 2; pp. 224 - 235 |
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Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本耳鼻咽喉科学会
1998
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ISSN | 0030-6622 |
Cover
Summary: | 頭, 身体軸に対する重力方向の変化により視運動性眼振(OKN)が変化することが知られている. 今回我々は, 視運動性眼振で, 重力の方向情報の長時間の変化に対する, 情報処理と動眼出力系の適応に経時的な変動があるかどうかを, 健常被検者13名(実験群10名, 対照群3名)で検討した. 実験群は, 座位でOKNを記録後, 頭位を固定した側臥位を長時間とらせ, 更にその後座位に戻し, 経時的に(座位, 側臥直後, 2時間後, 4時間後, 座位復帰直後, 2時間後) OKNを記録することにより, 異なった重力の方向に適応していく状態を検討した. 対照群はすべて座位の状態で実験群と同じ時間経過に従いOKNを記録した. その結果, 側臥位をとった直後より, 時間の経過に伴い, 水平刺激によるOKNでは利得の経時的減少傾向を認めた. 垂直刺激によるOKNでは側臥負荷によって緩徐相上向き利得の増加を認めたが, 下向き刺激では利得に明らかな変化は認められなかった. このことから, 重力方向情報の長時間にわたる変化に対応して, 中枢における情報処理過程と動眼系への出力系には異なる2つの調節機構が存在することが分かった. また, 水平刺激と垂直刺激によりその反応の変動に明らかな差が認められ, 水平動眼系と垂直動眼系の神経回路が同一のものでないことがその原因の一部と推測された. |
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ISSN: | 0030-6622 |