Cis-dichloro-diamine-platinum(CDDP)のEBウイルス抗原発現におよぼす阻害効果

「はじめに」 地球上のいたる人種に, しかも幼児の時からあまねく感染しているEpstein-Barrウイルス(EBV)は, 他のヘルペス群ウイルスと同じように潜伏感染の形をとる. EBVの人体での潜伏感染の場所はBリンパ球であり, 感染細胞にはウイルス粒子内DNAと同じサイズのEBV-DNAが大部分環状プラスミド状態で核内に存在し, 分裂中期では染色体と結合している1). また一部は細胞DNAに組み込まれている2). この潜在EBV遺伝子の再活性化が, 上咽頭癌(NPC)発癌に密接に関係していることが, 近年明らかにされつつある. すなわちEBV遺伝子による細胞内の発癌遺伝子の活性化とそれらに...

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Published in日本耳鼻咽喉科学会会報 Vol. 92; no. 2; pp. 189 - 311
Main Authors 古川仭, 加藤千維子, 上出文博, 梅田良三
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本耳鼻咽喉科学会 20.02.1989
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Summary:「はじめに」 地球上のいたる人種に, しかも幼児の時からあまねく感染しているEpstein-Barrウイルス(EBV)は, 他のヘルペス群ウイルスと同じように潜伏感染の形をとる. EBVの人体での潜伏感染の場所はBリンパ球であり, 感染細胞にはウイルス粒子内DNAと同じサイズのEBV-DNAが大部分環状プラスミド状態で核内に存在し, 分裂中期では染色体と結合している1). また一部は細胞DNAに組み込まれている2). この潜在EBV遺伝子の再活性化が, 上咽頭癌(NPC)発癌に密接に関係していることが, 近年明らかにされつつある. すなわちEBV遺伝子による細胞内の発癌遺伝子の活性化とそれらによる多段階的作用が, 発癌のイニシエーターとなる疑いが持たれている3)4)5). したがって, 潜在EBV遺伝子の再活性化機序を解明することは, EBV発癌を考える上で非常に重用と思われる. ところで, 発癌プロモーターである, 12-O-tetradecanoylphorbol-13-acetate(TPA)6)やn-butyrate(SB)7)は単独や同時処理でEBV抗原の発現を高めることができる.
ISSN:0030-6622