突発性難聴に対するステロイド大量療法の治療効果

突発性難聴に対する治療効果を, ステロイドの投与量により2群に分類し, ステロイド大量療法の効果を検討することを目的とした. 対象は, 平成5年4月から平成10年3月の間に聖マリアンナ医科大学東横病院耳鼻咽喉科を受診した突発性難聴患者38例とした. 19例のステロイド大量療法群と19例のコントロール群を, 厚生省特定疾患急性高度難聴調査研究班の聴力回復判定基準, 250Hzから4kHzの5周波数の算術平均の改善度, 改善度を患側と健側との差で割った改善率の3種類の方法を用いて比較した. 厚生省特定疾患急性高度難聴調査研究班の聴力回復判定基準では, 治癒は, コントロール群は7例であったが, ス...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本耳鼻咽喉科学会会報 Vol. 101; no. 11; pp. 1311 - 1315
Main Authors 越智健太郎, 三井雅夫, 渡辺昭司, 中島博昭, 大橋徹, 木下裕継, 釼持睦, 加藤功
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本耳鼻咽喉科学会 1998
Online AccessGet full text
ISSN0030-6622

Cover

More Information
Summary:突発性難聴に対する治療効果を, ステロイドの投与量により2群に分類し, ステロイド大量療法の効果を検討することを目的とした. 対象は, 平成5年4月から平成10年3月の間に聖マリアンナ医科大学東横病院耳鼻咽喉科を受診した突発性難聴患者38例とした. 19例のステロイド大量療法群と19例のコントロール群を, 厚生省特定疾患急性高度難聴調査研究班の聴力回復判定基準, 250Hzから4kHzの5周波数の算術平均の改善度, 改善度を患側と健側との差で割った改善率の3種類の方法を用いて比較した. 厚生省特定疾患急性高度難聴調査研究班の聴力回復判定基準では, 治癒は, コントロール群は7例であったが, ステロイド大量療法群は3例であり, 著明回復以上を有効とすると, コントロール群は15例(78.9%)で有効で, ステロイド大量療法群はやや低く10例(52.6%)に有効であったが, 統計学的には有意差は認めなかった(p=0.39). コントロール群の改善度の平均値と標準偏差は, それぞれ41.8dBと20.9dBであったが, ステロイド大量療法群は32.9dBと24.8dBとやや低値であった. この差は, 統計学的には有意ではなかった(p=0.24). また, コントロール群における改善率の平均値と標準偏差は0.70と0.35であったが, ステロイド大量療法群は0.49と0.38とやや低かった. この差は統計学的に有意なレベルに接近していた(p=0.09). 今回の検討では, ステロイド大量療法は3種類すべての検討においてコントロール群と有意差を認めなかったが, コントロール群と比較して治療効果は低く, 少なくとも顔面神経麻痺に対する効果とは異なっていた.
ISSN:0030-6622