長期血液透析患者に発症し, 巨大仮性嚢胞を形成した急性膵炎の1例
長期透析中の慢性腎不全患者に合併した急性膵炎の1例を報告する. 症例は39歳, 女性. 透析歴18年の透析患者が誘因なく腹痛, 嘔吐を主訴に搬送された. 臨床症状, 血清膵酵素の上昇(アミラーゼ2450IU/l, エラスターゼ1, 3412IU/l), 及び膵腫大(腹部超音波検査, CT)より急性膵炎と診断した. 発症1週間で約15×10cmの膵仮性嚢胞を形成した. 未移植の慢性腎不全患者の急性膵炎の報告は本邦では少ないが, 文献的には発生率2.3%で, 健常者に比して高いとされている. その原因として二次性副甲状腺機能亢進症や高カルシウム血症, あるいは高脂血症, 動脈硬化などの関与が示唆さ...
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Published in | 川崎医学会誌 Vol. 19; no. 3; pp. 229 - 234 |
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Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
川崎医学会
1993
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Online Access | Get full text |
ISSN | 0386-5924 |
Cover
Summary: | 長期透析中の慢性腎不全患者に合併した急性膵炎の1例を報告する. 症例は39歳, 女性. 透析歴18年の透析患者が誘因なく腹痛, 嘔吐を主訴に搬送された. 臨床症状, 血清膵酵素の上昇(アミラーゼ2450IU/l, エラスターゼ1, 3412IU/l), 及び膵腫大(腹部超音波検査, CT)より急性膵炎と診断した. 発症1週間で約15×10cmの膵仮性嚢胞を形成した. 未移植の慢性腎不全患者の急性膵炎の報告は本邦では少ないが, 文献的には発生率2.3%で, 健常者に比して高いとされている. その原因として二次性副甲状腺機能亢進症や高カルシウム血症, あるいは高脂血症, 動脈硬化などの関与が示唆されている. 本症例は, 発症前約2年間にわたり, Ca製剤, 活性型ビタミンD製剤が処方されており, それが高カルシウム血症の原因となっていたと思われる. (平成5年9月6日採用) はじめに 長期の血液透析患者では, 膵障害の発生率が高いことが剖検による検索において指摘されている1),2). 末期腎不全患者の急性膵炎の発生はRutskyら3)が2.3%の高い発生率を報告している. しかし, 本邦での長期透析患者の膵炎発生に関する報告はまだ少ない4)~6). 今回, 我々は長期血液透析中, 急性膵炎を発症し, 巨大仮性膵嚢胞を形成した症例を経験したので報告する. |
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ISSN: | 0386-5924 |