縦隔内副甲状腺嚢腫の1例

縦隔内副甲状腺嚢腫は非常に希な疾患で文献上27例が報告されているにすぎない. 今回我々は1症例を経験したので, 文献的考察を加えて報告する. 症例は62歳女性で, 咳嗽と喀痰のため撮影した胸部X線検査にて縦隔内異常陰影を指摘され, 当科で精査を行った. 甲状腺左葉下極付近より始まり上縦隔へ達する嚢腫性病変を認め, 甲状腺嚢腫を疑ってcervical approachにて嚢腫摘出術を施行した. 術後組織診断は副甲状腺嚢腫であった. これまで報告されている27例に本症例を加えて検討したところ, 副甲状腺機能亢進症状を伴う10例では男性が8例で, 伴わない18例では女性が13例で, 機能亢進症状と性...

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Published in川崎医学会誌 Vol. 20; no. 1; pp. 47 - 51
Main Authors 松下明, 土光荘六, 稲田洋, 野上厚志, 正木久男, 吉田浩, 福廣吉晃, 藤原巍, 勝村達喜
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 川崎医学会 1994
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ISSN0386-5924

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Summary:縦隔内副甲状腺嚢腫は非常に希な疾患で文献上27例が報告されているにすぎない. 今回我々は1症例を経験したので, 文献的考察を加えて報告する. 症例は62歳女性で, 咳嗽と喀痰のため撮影した胸部X線検査にて縦隔内異常陰影を指摘され, 当科で精査を行った. 甲状腺左葉下極付近より始まり上縦隔へ達する嚢腫性病変を認め, 甲状腺嚢腫を疑ってcervical approachにて嚢腫摘出術を施行した. 術後組織診断は副甲状腺嚢腫であった. これまで報告されている27例に本症例を加えて検討したところ, 副甲状腺機能亢進症状を伴う10例では男性が8例で, 伴わない18例では女性が13例で, 機能亢進症状と性別に因果関係が認められた(p<0.01, κ2検定). 縦隔内嚢腫性病変の鑑別では副甲状腺嚢腫も念頭におく必要がある. 副甲状腺機能亢進症状を伴わない症例での術前診断は困難であるが, 穿刺液中の副甲状腺ホルモンの測定により可能となる. 「はじめに」縦隔内副甲状腺嚢腫は非常に希な疾患で, 文献上27例が報告されているにすぎない1)~19). 今回我々は術前診断のつかなかった一例を経験したので, 文献的考察を加えて報告する.
ISSN:0386-5924