末梢神経障害を伴ったミトコンドリアミオパチーの1例

患者は41歳男性. 8歳頃より四肢, 特に下肢の筋力低下を白覚し, 28歳時に一過性の眼瞼下垂と外眼筋麻痺が出現, その後消長を繰り返す両上下肢の筋力低下と構音障害, 嚥下障害が出現した. 28歳時におこなった大腿四頭筋筋生検では, 軽度の筋原性変化とragged-red fiber, 電顕で腫大した異常ミトコンドリアがみられたためミトコンドリアミオパチーと診断した. 30歳時に行った筋電図所見では神経原性変化がみられ, 末梢神経伝導検査では感覚神経伝導速度の潜時の遅延がみられた. 末梢神経障害の合併が疑われ, 腓腹神経生検を施行. 小径, 大径有髄線維の脱落と軸索変性を認めた. また異常ミト...

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Published in川崎医学会誌 Vol. 24; no. 2; pp. 107 - 111
Main Authors 向井 公浩, 柴田 明徳, 安田 雄, 寺尾 章, 調 輝男
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 川崎医学会 1998
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Summary:患者は41歳男性. 8歳頃より四肢, 特に下肢の筋力低下を白覚し, 28歳時に一過性の眼瞼下垂と外眼筋麻痺が出現, その後消長を繰り返す両上下肢の筋力低下と構音障害, 嚥下障害が出現した. 28歳時におこなった大腿四頭筋筋生検では, 軽度の筋原性変化とragged-red fiber, 電顕で腫大した異常ミトコンドリアがみられたためミトコンドリアミオパチーと診断した. 30歳時に行った筋電図所見では神経原性変化がみられ, 末梢神経伝導検査では感覚神経伝導速度の潜時の遅延がみられた. 末梢神経障害の合併が疑われ, 腓腹神経生検を施行. 小径, 大径有髄線維の脱落と軸索変性を認めた. また異常ミトコンドリアの集積や炎症はみられなかった. 以後症状は消長を繰り返していたが, 31歳頃より緩徐進行性となった. 41歳時, 筋力低下が進行したため再度筋生検を実施したところ, 筋原性変化の悪化がみられた. 本例の末梢神経障害の原因としては, ミトコンドリア異常に伴う代謝性因子の関与が示唆された.
ISSN:0386-5924