鶏胚培養脳細胞に対するビリルビンの影響

クモ膜下出血の重篤な症状の原因としては, 出血に直接起因する頭蓋内場所占拠性障害12)とともに, 二次的に発生する脳腫脹, 内水頭症, 二次的脳幹損傷4), および血管攣縮に続発する脳血流障害や脳梗塞などが重視されている. しかし, 血液がいったん血管外に出た場合は, 物理的のみならず化学的にも組織に有害に働く. これは神経系にも適用され, クモ膜下出血において血液物質が直接脳細胞を障害する9, 13). クモ膜下出血後, 髄液中の赤血球は溶血し, オキシヘモグロビンになり, その濃度は2~3日で最高値に達する1). さらに, 髄液中のビリルビンへの転換酵素が作用してビリルビンに変化する8)....

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published inNeurologia medico-chirurgica Vol. 27; no. 4; pp. 265 - 270
Main Authors 伊藤治英, 嶋田修美, 土屋寿司郎, 北林正宏, 山本信二郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本脳神経外科学会 1987
Online AccessGet full text
ISSN0470-8105

Cover

More Information
Summary:クモ膜下出血の重篤な症状の原因としては, 出血に直接起因する頭蓋内場所占拠性障害12)とともに, 二次的に発生する脳腫脹, 内水頭症, 二次的脳幹損傷4), および血管攣縮に続発する脳血流障害や脳梗塞などが重視されている. しかし, 血液がいったん血管外に出た場合は, 物理的のみならず化学的にも組織に有害に働く. これは神経系にも適用され, クモ膜下出血において血液物質が直接脳細胞を障害する9, 13). クモ膜下出血後, 髄液中の赤血球は溶血し, オキシヘモグロビンになり, その濃度は2~3日で最高値に達する1). さらに, 髄液中のビリルビンへの転換酵素が作用してビリルビンに変化する8). これは2~3週間髄液中に残存する6). 一方, ヘモグロビン分解によって生じた鉄はヘモジデリンとして脳細胞に沈着する. 本論文では, これら血液成分として髄液中にもっとも長く存在するビリルビンが鶏胚培養脳細胞の形態と糖代謝に及ぼす影響を検索した.
ISSN:0470-8105