Palinopsiaを主症状としたテント髄膜腫の1例

palinopsia(視覚保続)とは, 対象物が除去されたのち, それと同じ程度に鮮明な像が再び視野のなかに出現する現象を言う. 1951年, Critchley4)がpalinopsiaの7例を報告して以来, 本邦では深田ら6, 7)の4症例の報告があるのみである. 我々は, テント髄膜腫でpalinopsiaを呈した症例を経験したので, その概要について報告する. 症例 〈患者〉58才, 女性(家婦, 右手利き) 主訴:前夜テレビで見た画面の一部が視野の右上に見えた. 家族歴・既往歴:特記すべきことなし. 現病歴:1986年2月16日, 台所で夕食の準備をしていたところ, 視野の右上半部に...

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Published inNeurologia medico-chirurgica Vol. 29; no. 4; pp. 324 - 327
Main Authors 杉山健, 持田英俊, 唐沢秀治, 金弘, 古川哲雄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本脳神経外科学会 1989
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Summary:palinopsia(視覚保続)とは, 対象物が除去されたのち, それと同じ程度に鮮明な像が再び視野のなかに出現する現象を言う. 1951年, Critchley4)がpalinopsiaの7例を報告して以来, 本邦では深田ら6, 7)の4症例の報告があるのみである. 我々は, テント髄膜腫でpalinopsiaを呈した症例を経験したので, その概要について報告する. 症例 〈患者〉58才, 女性(家婦, 右手利き) 主訴:前夜テレビで見た画面の一部が視野の右上に見えた. 家族歴・既往歴:特記すべきことなし. 現病歴:1986年2月16日, 台所で夕食の準備をしていたところ, 視野の右上半部に草原と木立の景色が色彩, 輪郭とも鮮明に出現, 約1分間持続したのち, 消失した. この間, 意識は清明であり, 頭痛などの自覚症状はなかった. さらに同夜, トイレでもまったく同じ景色が視野の右上に出現, 約30秒間で消失した. これらの像はいずれも前夜のテレビ番組「大草原の小さな家」の一場面であった. その後, このような現象はなかったが, 近医眼科を受診し, 精査治療のため, 当科を受診した.
ISSN:0470-8105