膵胃吻合による膵中央切除を施行した主膵管断裂膵損傷(IIIb型)の1例

「要旨」主膵管損傷を伴うIIIb型膵損傷に対して, 膵胃吻合による膵中央切除術を施行し良好な結果を得た1例を報告する. 症例は27歳の女性で仰臥位となっているところで心窩部を踏まれ, その後, 腹痛が出現, 当科に緊急入院した. 腹部US, CTで主膵管完全断裂を伴う膵損傷と診断し, 受傷後約12時間後に手術を施行した. 術中所見で, 膵臓は門脈前面で完全に離断されており, 同部から横行結腸間膜, 小網に広がる血腫を認めた. 他臓器損傷は認めなかった. 膵損傷部を含めた膵中央切除後に頭側の膵臓は主膵管を結紮し, 断端を縫合閉鎖した. 尾側の膵臓は膵胃吻合で再建を行った. 術後は特に問題なく経過...

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Published in膵臓 Vol. 25; no. 1; pp. 80 - 84
Main Authors 旭吉雅秀, 千々岩一男, 矢野公一, 今村直哉, 永野元章, 大内田次郎, 甲斐真弘, 近藤千博
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本膵臓学会 2010
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Summary:「要旨」主膵管損傷を伴うIIIb型膵損傷に対して, 膵胃吻合による膵中央切除術を施行し良好な結果を得た1例を報告する. 症例は27歳の女性で仰臥位となっているところで心窩部を踏まれ, その後, 腹痛が出現, 当科に緊急入院した. 腹部US, CTで主膵管完全断裂を伴う膵損傷と診断し, 受傷後約12時間後に手術を施行した. 術中所見で, 膵臓は門脈前面で完全に離断されており, 同部から横行結腸間膜, 小網に広がる血腫を認めた. 他臓器損傷は認めなかった. 膵損傷部を含めた膵中央切除後に頭側の膵臓は主膵管を結紮し, 断端を縫合閉鎖した. 尾側の膵臓は膵胃吻合で再建を行った. 術後は特に問題なく経過し, 術後31日で退院となったが, 退院前の膵機能検査では, 膵内外分泌機能に異常は認めなかった. 「はじめに」外傷性膵損傷は, まれな疾患ではあるが, 病態によっては保存的治療から外科的治療まで様々であり, 迅速で適切な処置がなされないと, 膵液瘻や重症感染症などの重篤な合併症を引き起こし, 治療に難渋することがある.
ISSN:0913-0071