特発性脊髄ヘルニアの1例

はじめに 脊髄ヘルニアは脊髄が硬膜外に脱出して生じる希な疾患で,先行する外科手術に続く術後性と外傷に起因する外傷性,原因の特定ができない特発性に分けられる.今回我々は胸椎部の特発性脊髄ヘルニアの1例を経験したので画像診断,治療法についての考察を加え報告する. 症例 72歳の女性,既往歴,家族歴に特記すべき事項なし.4年前より左下肢感覚麻痺が出現し次第に右下肢筋力低下を認め,近医にて精査行うも診断確定せず,経過観察のみされていた.筋力低下が進行してくるため当院紹介となる.平成12年4月の初診時所見では両下肢のミエロパチー,右体幹の筋力低下,右胸部以下の温痛覚に対する知覚鈍麻に前胸部の全知覚脱出部...

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Published in整形外科と災害外科 Vol. 51; no. 2; pp. 324 - 328
Main Authors 内田 雄, 瀬良敬祐, 山本尚幸, 松林昌平
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 西日本整形・災害外科学会 2002
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ISSN0037-1033

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Summary:はじめに 脊髄ヘルニアは脊髄が硬膜外に脱出して生じる希な疾患で,先行する外科手術に続く術後性と外傷に起因する外傷性,原因の特定ができない特発性に分けられる.今回我々は胸椎部の特発性脊髄ヘルニアの1例を経験したので画像診断,治療法についての考察を加え報告する. 症例 72歳の女性,既往歴,家族歴に特記すべき事項なし.4年前より左下肢感覚麻痺が出現し次第に右下肢筋力低下を認め,近医にて精査行うも診断確定せず,経過観察のみされていた.筋力低下が進行してくるため当院紹介となる.平成12年4月の初診時所見では両下肢のミエロパチー,右体幹の筋力低下,右胸部以下の温痛覚に対する知覚鈍麻に前胸部の全知覚脱出部位を伴い,典型的なブラウンセカール症状を呈していた.初診後に行ったMRI検査でTh5レベルの胸髄は前方に偏位し,後方からの圧迫が示唆されくも膜嚢胞を疑ったが,圧迫性の病変は確認できなかった(図1).脊髄造影を入院後予定したが,患者の希望によりしばらく外来通院にて経過観察を行うこととなった.右下肢および体幹の筋力低下が徒手筋力テストで2まで増悪し1本杖歩行となったため,再度MRI検査を行うとTh5レベルの胸髄は前方に偏位したままであった.
ISSN:0037-1033