合着用セメントの粘性と被膜厚さの関係に関する研究

「歯科補綴学的意義」合着用セメントの被膜厚さは歯冠補綴物の成否を左右する重要な性質である. これまで, 被膜厚さはセメント粒子直径や稠度の影響を受けるとされてきたが, 詳細については不明であった. 本研究では従来型合着用セメントに関する基礎的性質として, 稠度, 被膜厚さ, 粉末の粒度分布を測定するとともに, 練和後における粘度と被膜厚さの関係について研究を行った. その結果, 被膜厚さに影響する因子について新しい示唆が得られた. 「抄録」「目的」:合着用セメントの被膜厚さは, 歯冠補綴物の成否を左右する重要な性質の1つである. 被膜厚さはセメント粉末粒子直径, 粘度の影響を受けるとされてきた...

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Published in日本補綴歯科学会雑誌 Vol. 45; no. 5; pp. 612 - 621
Main Authors 笠原紳, 齋藤裕太, 細谷誠, 畠山憲子, 安藤正明, 木村幸平
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本補綴歯科学会 2001
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ISSN0389-5386

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Summary:「歯科補綴学的意義」合着用セメントの被膜厚さは歯冠補綴物の成否を左右する重要な性質である. これまで, 被膜厚さはセメント粒子直径や稠度の影響を受けるとされてきたが, 詳細については不明であった. 本研究では従来型合着用セメントに関する基礎的性質として, 稠度, 被膜厚さ, 粉末の粒度分布を測定するとともに, 練和後における粘度と被膜厚さの関係について研究を行った. その結果, 被膜厚さに影響する因子について新しい示唆が得られた. 「抄録」「目的」:合着用セメントの被膜厚さは, 歯冠補綴物の成否を左右する重要な性質の1つである. 被膜厚さはセメント粉末粒子直径, 粘度の影響を受けるとされてきたが, その詳細は不明であった. 本研究では, セメントの基礎的性質である稠度, 被膜厚さ, 粉末粒度分布, さらに練和後の粘度を測定し, 被膜厚さに与える因子を調べた. 「方法」:従来型合着用セメント(リン酸亜鉛セメント1種, グラスポリアルケノートセメント3種)を用いた. セメントの基礎的性質はJIS T-6602(ISO9917相当)に準じ測定し, あわせて粉末の粒度分布を測定した. 練和後の見かけの粘度変化はコーンプレート型回転粘度計を用いて測定するとともに, 任意粘度における被膜厚さの測定を行った. 「結果」:セメントの稠度は時間経過とともに高くなったが, 被膜は時間経過とともに厚くなるとは限らなかった. 粉末中の比較的大きな粒子の直径と被膜厚さの間に関連は認められなかった. 粘度に対する被膜厚さの測定の結果, 被膜厚さは粘度の大きさに対しほぼ直線的に増加する傾向があったが, その傾向はセメントによって異なった. 「結論」:合着用セメントの被膜厚さに対して, セメント粒子直径の影響はみられなかった. 被膜厚さには練和後の粘度変化と, 粉末の粒度分布が影響していることが示唆された.
ISSN:0389-5386