肺癌の側頭骨転移により高度難聴をきたした1症例

短期間のうちに顔面神経麻痺, 難聴, 平衡障害が出現したため来院し, 初診時Ramsay Hunt症候群不全型と診断されたが, その後の精査により肺癌の側頭骨転移癌によることが判明した1例を報告した。患者は34歳の男性で, 既往として平成6年6月より9月まで肺癌の治療歴があり, 上記症状が出現したため同年10月当科を受診しRamsay Hunt症候群不全型と診断されたが, MRI検査により側頭骨の錐体尖端部に腫瘍像が認められ, 骨シンチでも同部位に集積像が認められ, そのほかの骨にも多発性に集積像が認められたために肺癌の側頭骨転移癌と診断した。この症例では側頭骨X線検査では内耳道の拡大は認めら...

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Published in耳鼻咽喉科展望 Vol. 40; no. 1; pp. 83 - 88
Main Authors 大塚, 康司, 平出, 文久, 下田, 雄丈, 吉浦, 宏治, 舩坂, 宗太郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 耳鼻咽喉科展望会 15.02.1997
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Summary:短期間のうちに顔面神経麻痺, 難聴, 平衡障害が出現したため来院し, 初診時Ramsay Hunt症候群不全型と診断されたが, その後の精査により肺癌の側頭骨転移癌によることが判明した1例を報告した。患者は34歳の男性で, 既往として平成6年6月より9月まで肺癌の治療歴があり, 上記症状が出現したため同年10月当科を受診しRamsay Hunt症候群不全型と診断されたが, MRI検査により側頭骨の錐体尖端部に腫瘍像が認められ, 骨シンチでも同部位に集積像が認められ, そのほかの骨にも多発性に集積像が認められたために肺癌の側頭骨転移癌と診断した。この症例では側頭骨X線検査では内耳道の拡大は認められなかったが, MRIガドリニウム造影にて内耳道が著明に造影されたので, 側頭骨に転移した癌は硬膜を伝わり内耳道骨壁を破壊せずに, 内耳道底から蝸牛軸へと内耳道の縦軸方向に進展していき, meningeal carcinomatosisの状態となったものと考えた。現在悪性腫瘍にかかっている, あるいは過去にかかったことのある患者では突発性の難聴や顔面神経麻痺が出現した場合には側頭骨転移癌の可能性も考慮すべきである。
ISSN:0386-9687
1883-6429
DOI:10.11453/orltokyo1958.40.83