耳硬化症の発症におけるII型コラーゲンの関与について

耳硬化症の病因について様々な仮説が提起されているが,いまだ確定するに至っていない。近年になって,その病因はII型コラーゲンに対する自己免疫疾患であるという仮説が発表され,以後様々な実験がなされている。 本研究では,(1)耳硬化症におけるII型コラーゲンの関与を検討するために患者血清中の抗II型コラーゲン抗体価の測定,(2)II型コラーゲン免疫ラットにおける側頭骨の組織学的検討および(3)II型コラーゲン免疫ラットのリンパ球と線維芽細胞・マクロファージの相互作用によるコラゲナーゼ産生能に対する影響等を検討した。その結果患者血清中には20例中4例に抗II型コラーゲン抗体陽性例がみられた。(2)しか...

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Published in耳鼻咽喉科展望 Vol. 34; no. 1; pp. 25 - 37
Main Author 矢部, 武
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 耳鼻咽喉科展望会 15.02.1991
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ISSN0386-9687
1883-6429
DOI10.11453/orltokyo1958.34.25

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Summary:耳硬化症の病因について様々な仮説が提起されているが,いまだ確定するに至っていない。近年になって,その病因はII型コラーゲンに対する自己免疫疾患であるという仮説が発表され,以後様々な実験がなされている。 本研究では,(1)耳硬化症におけるII型コラーゲンの関与を検討するために患者血清中の抗II型コラーゲン抗体価の測定,(2)II型コラーゲン免疫ラットにおける側頭骨の組織学的検討および(3)II型コラーゲン免疫ラットのリンパ球と線維芽細胞・マクロファージの相互作用によるコラゲナーゼ産生能に対する影響等を検討した。その結果患者血清中には20例中4例に抗II型コラーゲン抗体陽性例がみられた。(2)しかし,II型コラーゲン免疫ラットの側頭骨に耳硬化症様の組織学的変化は認められなかった。(3)一方,II型コラーゲン免疫ラットにおいては,リンパ球が線維芽細胞・マクロファージのコラゲナーゼ産生能を促進するという実験結果を得た。 これらの結果から,耳硬化症発症においてII型コラーゲンが何らかの関与をしている可能性が示唆されたが,その他の因子の存在が必要であろうと思われた。
ISSN:0386-9687
1883-6429
DOI:10.11453/orltokyo1958.34.25