糖尿病合併症におけるトロンボモジュリン測定の有用性

トロンボモジュリン(thrombomodulin, 以下, TM)は血管内皮細胞膜上におもに存在する血管内抗凝固蛋白質である. 糖尿病慢性合併症の存在下では, 血管内皮細胞の障害が発生し, 血中にTMが増加するため, 糖尿病合併症の程度の指標として最近注目されるようになった. 今回, 著者らは血中TMをインスリン非依存型糖尿病患者(NIDDM)にて測定し, その有用性を検討した. TMの測定は酵素抗体法を用いた. HbA1cと血中TMの比較では, 両者には有意な相関性は認めなかった. 次に糖尿病性合併症それぞれについての検討を行った. 腎症を表す尿中微量アルブミン, 蓄尿中蛋白と血中TMとのそ...

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Published in川崎医学会誌 Vol. 19; no. 1; pp. 19 - 24
Main Authors 津島公, 尾山秀樹, 安東千代, 広川泰嗣, 住友正治, 江口毅, 八幡愛弓, 河合洋二郎, 米田正也, 松木道裕, 西田聖幸, 堀野正治
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 川崎医学会 1993
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Summary:トロンボモジュリン(thrombomodulin, 以下, TM)は血管内皮細胞膜上におもに存在する血管内抗凝固蛋白質である. 糖尿病慢性合併症の存在下では, 血管内皮細胞の障害が発生し, 血中にTMが増加するため, 糖尿病合併症の程度の指標として最近注目されるようになった. 今回, 著者らは血中TMをインスリン非依存型糖尿病患者(NIDDM)にて測定し, その有用性を検討した. TMの測定は酵素抗体法を用いた. HbA1cと血中TMの比較では, 両者には有意な相関性は認めなかった. 次に糖尿病性合併症それぞれについての検討を行った. 腎症を表す尿中微量アルブミン, 蓄尿中蛋白と血中TMとのそれぞれの相関係数はr=0.695, r=0.730と, ともに有意な正の相関を示した. 網膜症との関連では, 糖尿病性網膜症の増悪進展により, 血中TMは高値を示す傾向を認めた. 糖尿病性神経症ではMCV, SCV, QTcともに, それぞれ両者に有意な相関性は認めなかった. 糖尿病性合併症を有しない群と糖尿病性腎症, 網膜症, 神経症の三大合併症を有する血中TMの比較では, それぞれ2.7±0.6ng/ml, 6.7±3.8ng/mlであり, 合併症を有する群で有意な高値を示した.
ISSN:0386-5924