Neuro-otology in Space Medicine: Exploring the Pathogenic Mechanisms of Space Motion Sickness

無重力環境ではさまざまな神経学的症状が発生し,宇宙酔いの症状として現れるもの(そのほとんどは乗り物酔いと同じ)は非常に重要である.この観点から,宇宙開発事業団(現JAXA)と共同で,健康な男性ボランティアを被験者に頭部を動かしながら様々な加速度負荷をかけることにより,自律神経系の動き,ストレスホルモンの変化,乗り物酔いの発生率を調査した.また,バーチャルリアリティのヘッドセットを介して提示される視野情報の表示のタイミング,または表示位置が,被験者の頭部の動きに対して変化した場合の乗り物酔いの発生率を調べた.頭部と目の動きが予想外に非同期状態になると,乗り物酔いの発生率は増加し,ACTHやADH...

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Published in神経眼科 Vol. 39; no. 2; pp. 113 - 125
Main Authors 加藤, 雄仁, 望月, 文博, 伊藤, 友祐, 石井, 正則
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本神経眼科学会 25.06.2022
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ISSN0289-7024
2188-2002
DOI10.11476/shinkeiganka.39.113

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Summary:無重力環境ではさまざまな神経学的症状が発生し,宇宙酔いの症状として現れるもの(そのほとんどは乗り物酔いと同じ)は非常に重要である.この観点から,宇宙開発事業団(現JAXA)と共同で,健康な男性ボランティアを被験者に頭部を動かしながら様々な加速度負荷をかけることにより,自律神経系の動き,ストレスホルモンの変化,乗り物酔いの発生率を調査した.また,バーチャルリアリティのヘッドセットを介して提示される視野情報の表示のタイミング,または表示位置が,被験者の頭部の動きに対して変化した場合の乗り物酔いの発生率を調べた.頭部と目の動きが予想外に非同期状態になると,乗り物酔いの発生率は増加し,ACTHやADHなどのストレスホルモンが急速に増加した.3日間連続して刺激を与えると適応が起こり,乗り物酔いの発生率は急激に減少した.緩やかなコリオリ刺激によって交感神経系が異常に興奮した被験者では,その後のより強い刺激により,乗り物酔いが有意に高い割合で誘発され,乗り物酔いに対する感受性に自律神経系が関与していることを示唆している.乗り物酔いは,予想外の空間や時間に非同期した情報に起因し,また脳内で適応過程を引き起こす状態でもあると考える.
ISSN:0289-7024
2188-2002
DOI:10.11476/shinkeiganka.39.113