少子化が児童の発達に及ぼす影響 小学生の家族認識を中心に

少子化が子どもの発達に及ぼす影響を, 子どもの家族認識の視点から考察した.最初に人口動態統計から少子化の実態を家庭の子ども数の変化の面から明らかにした.次に, 1978年に行った「児童の家族に関する認識」の調査を1995年に実施し, 17年間の変化を資料として少子化が児童の発達にどのような影響を与えているかを考察した. その結果, 次のことが明らかとなった. (1) 「夫婦が生涯に産んだ子ども数」および「出生順位別出生割合」の推移からみると, 家庭の子ども数は, 少子化が問題とされるようになった1980年代以降でも, きょうだい数は2, 3人が多く, 一人っ子は必ずしも多くない. (2) 家族...

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Published in日本家政学会誌 Vol. 47; no. 2; pp. 95 - 102
Main Authors 久世, 妙子, 中村, 喜美子
Format Journal Article
LanguageEnglish
Published 一般社団法人 日本家政学会 15.02.1996
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Summary:少子化が子どもの発達に及ぼす影響を, 子どもの家族認識の視点から考察した.最初に人口動態統計から少子化の実態を家庭の子ども数の変化の面から明らかにした.次に, 1978年に行った「児童の家族に関する認識」の調査を1995年に実施し, 17年間の変化を資料として少子化が児童の発達にどのような影響を与えているかを考察した. その結果, 次のことが明らかとなった. (1) 「夫婦が生涯に産んだ子ども数」および「出生順位別出生割合」の推移からみると, 家庭の子ども数は, 少子化が問題とされるようになった1980年代以降でも, きょうだい数は2, 3人が多く, 一人っ子は必ずしも多くない. (2) 家族の年齢と仕事を知っているかについて質問した.その結果, 年齢を知っている児童の割合が増加していた.なかでも男児の増加率が女児よりも高かった.仕事については, 女児で母親の仕事を知っている児童の割合が増加していた. (3) 「おとうさん」, 「おかあさん」, 「おじいさん」, 「おばあさん」, 「あかちゃん」という家族名を普通名詞で提示し, 自由連想法によってイメージを記述させた. 父, 祖父, 祖母, 赤ちゃんに対する「児童とのかかわり」のイメージが増加していた. 1978年調査で多かった祖父の無記入が減少した.それに対し, 赤ちゃんに対する無記入は依然として高かった. (4) 児童の家事分担をその他を含めた30項目について調査した.家庭生活の合理化・近代化の影響を受け, 児童の家事分担の種類には変化がみられた. 食事を作る, もりつける, 自分の部屋の掃除, 風呂を沸かすの参加は増加した.それに対して, 茶わんを洗う, 洗濯物を洗う, 干す, 玄関や庭の掃除, 便所の掃除, 雑巾掛けやからぶき, ふろの水入れ, 食品の買い出し, 戸締まり・火の元の注意, 壊れたところの修理, 花や植木の水やりなどへの参加が減少していた. (5) おとうさん, おかあさんに対する要望や主張を自由記述形式で記入してもらった.全体的に父母への要望や主張は減少していた.とくに, 父に一緒にして欲しい, 母に買って欲しい・作って欲しいという要望が減少していた. 以上のように, 児童を中心にみた少子化は必ずしもきょうだい数の減少をもたらすものではない.家庭の子ども数は, 一人っ子より2, 3人が多い.さらに, 高齢化により, 身近に高齢者をみることができるようになったことから, 児童の家族の年齢や仕事の認知, 家族のイメージは豊かになった.しかし, 父や母への要望や主張が減少しているという結果からは, 積極的に自己主張をしたり, 日常生活を共にする父母に, 特別な要望や要求を持たなくなっている児童の姿が想像され, 家族関係のあり方が考えさせられる.
ISSN:0913-5227
1882-0352
DOI:10.11428/jhej1987.47.95