肥育豚へのペプスタチンの投与が胃食道部潰瘍・胃液性状および一般臨床所見等に及ぼす影響

豚の胃潰瘍の発生機序は複雑で, この原因や予防法は単一なものではない。そこで今回われわれは, 現在までに説えられている胃潰瘍の発生しやすい環境として, ケージ飼育法を用い敷料は全く用いず, 市販配合飼料のみを給与するといった飼養形態のもとで, ペプシン活性を抑制することによって本症を予防しようとする目的をもって, ペプシンの特異阻害物質であるペプスタチンを飼料に添加し, 前胃部潰瘍の予防効果, ペプシン活性の抑制効果, 並びに発育, 臨床所見, 血液性状, 枝肉および諸臓器等への影響について検討し次の結果を得た。 1. ペプスタチンの投与による胃潰瘍の予防効果は有意とはならなかったが, 対照区...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本養豚研究会誌 Vol. 14; no. 2; pp. 78 - 89
Main Authors 宮脇, 耕平, 五味, 一郎, 田中, 章人, 川上, 素行
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本養豚学会 30.09.1977
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:豚の胃潰瘍の発生機序は複雑で, この原因や予防法は単一なものではない。そこで今回われわれは, 現在までに説えられている胃潰瘍の発生しやすい環境として, ケージ飼育法を用い敷料は全く用いず, 市販配合飼料のみを給与するといった飼養形態のもとで, ペプシン活性を抑制することによって本症を予防しようとする目的をもって, ペプシンの特異阻害物質であるペプスタチンを飼料に添加し, 前胃部潰瘍の予防効果, ペプシン活性の抑制効果, 並びに発育, 臨床所見, 血液性状, 枝肉および諸臓器等への影響について検討し次の結果を得た。 1. ペプスタチンの投与による胃潰瘍の予防効果は有意とはならなかったが, 対照区と比べて50・100ppm両区には本症の発生が抑制される傾向が認められ, 本剤の50ppm以上の飼料添加によって胃潰瘍の予防効果が期待できるものと考えられた。 2. ペプスタチンのペプシン活性に及ぼす影響は, 有意な抑制効果が認められた。また空腹時のペプシン活性と本剤の添加濃度との間には直線回帰が認められた。 3. ペプシン活性は空腹時には高く給餌によって低下し, 給餌による影響を強く受けるものであった。したがって, 胃内のペプシン活性の異常な上昇を防ぐためには, 胃内に常に食糜の存在することが必要で, 胃内容を容れない空腹時を作らないことが, 本症の予防上効果が高いものと考えられた。 4. 発育, 臨床所見, 血液性状, 諸臓器等に及ぼす本剤の影響は特に認められず, 日量0.7~5.7mg/kgの連続投与では全く毒性は無いものと考えられた。
ISSN:0388-8460
2186-2567
DOI:10.14899/youton1964.14.78