ネコの実験的脳浮腫にあらわれた軸索の異常

硬膜外圧迫法を用いたネコの実験的脳浮腫の微細構造学的な研究で, しばしば異常な形態を示す神経線維が観察された. このような線維は圧迫を開始すると間もなく (およそ2∼4時間後に) 出現しはじめ, このときは軸索内にミトコンドリア, dense body, 小胞体などが多数集積して見られるが, 48時間続けられた圧迫を除去する頃になると, 軸索内は電子密度の高い無構造な物質または膜様物質で満たされ, その中に前述の細胞内小器官を多数含有する線維が散見されるようになる. 48時間加えられた圧迫を除去して7日ないし6ケ月後までは, 軸索は電子密度の高い無構造な物質だけで満たされるものが多くなり, 髄...

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Published inArchivum histologicum japonicum Vol. 28; no. 5; pp. 483 - 501
Main Author 早野, 信也
Format Journal Article
LanguageEnglish
Japanese
Published 国際組織細胞学会 1967
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ISSN0004-0681
DOI10.1679/aohc1950.28.483

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Summary:硬膜外圧迫法を用いたネコの実験的脳浮腫の微細構造学的な研究で, しばしば異常な形態を示す神経線維が観察された. このような線維は圧迫を開始すると間もなく (およそ2∼4時間後に) 出現しはじめ, このときは軸索内にミトコンドリア, dense body, 小胞体などが多数集積して見られるが, 48時間続けられた圧迫を除去する頃になると, 軸索内は電子密度の高い無構造な物質または膜様物質で満たされ, その中に前述の細胞内小器官を多数含有する線維が散見されるようになる. 48時間加えられた圧迫を除去して7日ないし6ケ月後までは, 軸索は電子密度の高い無構造な物質だけで満たされるものが多くなり, 髄鞘の層板状構造の乱れも加わり, 時には星状膠細胞やそれによく似た明調な細胞に, このような線維が飽食されているかのように観察されたりする. また髄鞘の層構造の乱れや破壊が著しく, 髄鞘によく似た電子密度の高い物質が通常の線維の間に観察されたりした. 結局, これらの特異な形態を示す線維は一連の変化過程にあるもので, これまでに脳浮腫の研究で報告されているように, 星状膠細胞の膨化やその細胞質中におけるグリコゲン様特殊顆粒の増加, 毛細血管透過性亢進, 白質の細胞間隙の拡大などから, 圧迫のために生じた脳の局所的循環障害による星状膠細胞の代謝異常, 次いで神経細胞にも代謝異常が起こり, まず形態学的にミトコンドリアの増加をもつて反応した神経細胞は, この異常に抗しきれず, 特異な形態を示すこれらの線維は変性過程を歩むに至つたものと考えられる. このことは二次変性を主としたこれまでの多くの研究や, 本研究の光顕的所見からも支持される.
ISSN:0004-0681
DOI:10.1679/aohc1950.28.483