早期に治療介入できた免疫関連有害事象(irAE)による劇症1型糖尿病の1例

症例は60歳代,女性。当院耳鼻咽喉科・頭頸部外科で硬口蓋がんに対して切除術が施行され,その後は放射線治療と化学療法が行われていた。X年に肺転移が出現したためニボルマブの投与が開始された。X+4年に誘因なくHbA1cが5.6%から6.4%と上昇した際に,免疫関連有害事象(irAE)による1型糖尿病の発症が疑われ当科で精査予定となった。紹介5日後に高血糖症状とケトーシスを呈し,劇症1型糖尿病の診断に至った。インスリン頻回注射療法を導入し,発症から約2ヵ月後にはニボルマブ投与を再開し,現在も血糖コントロールを行いながら硬口蓋がんに対する治療を継続中である。 免疫チェックポイント阻害剤(ICI)の1つ...

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Published in四国医学雑誌 Vol. 80; no. 3.4; pp. 131 - 136
Main Authors 遠藤, 裕美, 原, 倫世, 清水, 一磨, 吉田, 麻衣子, 浅井, 孝仁, 山上, 紘規, 金村, 亮, 倉橋, 清衛, 遠藤, 逸朗
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 徳島医学会 2024
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Summary:症例は60歳代,女性。当院耳鼻咽喉科・頭頸部外科で硬口蓋がんに対して切除術が施行され,その後は放射線治療と化学療法が行われていた。X年に肺転移が出現したためニボルマブの投与が開始された。X+4年に誘因なくHbA1cが5.6%から6.4%と上昇した際に,免疫関連有害事象(irAE)による1型糖尿病の発症が疑われ当科で精査予定となった。紹介5日後に高血糖症状とケトーシスを呈し,劇症1型糖尿病の診断に至った。インスリン頻回注射療法を導入し,発症から約2ヵ月後にはニボルマブ投与を再開し,現在も血糖コントロールを行いながら硬口蓋がんに対する治療を継続中である。 免疫チェックポイント阻害剤(ICI)の1つである抗programmed cell death protein-1(PD-1)抗体薬は,T細胞上のPD-1分子に結合してT細胞の活性化および増殖能を維持することで抗腫瘍効果を発揮する。ICIの使用に伴うirAEは,皮膚,消化管,肝臓,肺,内分泌臓器など全身で生じ,その症状は多岐にわたる1-3)。本症例の1型糖尿病を含め,診断と治療が遅れれば致死的な経過を辿るものも多く,irAEの早期発見と各専門医と連携した迅速な治療介入が重要である。今回,ニボルマブ投与中に高血糖,脱水,ケトーシスを呈し,劇症1型糖尿病を発症したが,ケトアシドーシスに至る前に治療介入し得た一例を経験したため報告する。
ISSN:0037-3699
2758-3279
DOI:10.57444/shikokuactamedica.80.3.4_131