犬膣及び尿性器洞の組織と神経分布とに就て
犬尿性器洞腔は末端部では背腹に延びて背高いが, 中間部では菱形となり, 頭部では腹方に対し半月を示す. 膣末端部では半月の彎曲は更に高度化し腔の高さは一層狭くなる. 膣は更に頭方に進むと固有の膣を示し, 半月の彎曲は軽減し, 腔は徐々に水平となり, 粘膜は多数の溝によって粘膜皺壁の形成を示す. 以上犬膣及び尿性器洞の腔は場所的に著明な形態的変化を示す. 然し膣末端部から洞末端部迄は粘膜の表面積には殆んど変りは見られない. 反之固有膣の粘膜表面積は溝形成により甚だ広く, 前者の3-4倍に達する. 膣及び尿性器洞の腔の形態的変化に相当して組織学的差異が見られ, 此事は其知覚神経分布にも重大関係を示...
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Published in | Archivum histologicum japonicum Vol. 10; no. 1; pp. 101 - 122 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | English Japanese |
Published |
国際組織細胞学会
20.03.1956
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ISSN | 0004-0681 |
DOI | 10.1679/aohc1950.10.101 |
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Summary: | 犬尿性器洞腔は末端部では背腹に延びて背高いが, 中間部では菱形となり, 頭部では腹方に対し半月を示す. 膣末端部では半月の彎曲は更に高度化し腔の高さは一層狭くなる. 膣は更に頭方に進むと固有の膣を示し, 半月の彎曲は軽減し, 腔は徐々に水平となり, 粘膜は多数の溝によって粘膜皺壁の形成を示す. 以上犬膣及び尿性器洞の腔は場所的に著明な形態的変化を示す. 然し膣末端部から洞末端部迄は粘膜の表面積には殆んど変りは見られない. 反之固有膣の粘膜表面積は溝形成により甚だ広く, 前者の3-4倍に達する. 膣及び尿性器洞の腔の形態的変化に相当して組織学的差異が見られ, 此事は其知覚神経分布にも重大関係を示す. 固有膣から尿性器洞の末端部に至る迄上皮と固有膜には大した変化は見られないが, 粘膜下膜には固有膣では静脉叢はないけれども, 膣末端部には豊富に現われ, 洞の末端部に向って減退する. 筋膜は固有膣では発達甚だ良好, 之に外接して輪走横紋筋層があり, 腹方では外膜により尿道と境する. 膣末端部では筋膜は横紋筋層と共に急に減退し, 洞に向って愈々劣勢となり, 軈て消失する. 尿道は膣末端部に入ると其筋膜は急激な減退を示し, 粘膜下膜は膣の夫に融合する. 犬外性器に於て膣と尿道が合流する尿性器洞を人膣前庭に相当せしめるならば, 之等の知覚神経分布は人に於けると大差を示さない. 即ち犬でも固有膣には知覚神経分布は見られないが, 膣末端部には会陰神経からの知覚線維の進入を見, 尿性器洞では多少より強力な知覚神経分布を見る. 犬膣末端部に見られる知覚線維は人に於けるよりも豊富で, 其終末もより複雑に構成される. 固有膜内には非分岐性及分岐性終末の外に少量の有被膜性及非被膜性糸毬終末も見られ, 又上皮内にも非分岐性及び分岐性上皮内線維が形成される. 其他平滑筋層内に特殊分岐性知覚終末の形成を見る. 此終末の複雑型は固有膣に接する尿道の平滑筋層内に形成される. 尿性器洞の頭部では膣末端部に於けると略ぼ同様な知覚終末形成を見るが, 洞中部では其他 Ruffini 氏小体に類似の終末が所々に発見される. 然し輪走平滑筋層を欠くから特殊筋層内終末は見られない. 此状態は洞末端部まで続く. |
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ISSN: | 0004-0681 |
DOI: | 10.1679/aohc1950.10.101 |