ヌタウナギ腸上皮の細胞間結合について. 凍結割断法による観察

ヌタウナギ (Eptatretus burgeri) の腸上皮の細胞間結合を おもに凍結割断法で観察した. ヌタウナギの腸上皮は, 高さ約160μmの極めて丈の高い上皮細胞からなっている. 超薄切片像では, 典型的な接着複合体が上皮細胞の側面細胞膜の上部に見られる. 凍結割断像を観察すると, 閉鎖帯は非常によく発達した形態を示している. 閉鎖帯の線條の数は7-19 (13.7±2.9) 本, 深さは0.3-2.0 (1.11±0.34)μmであり, 他の動物の腸上皮のものに比較して 極めて“緊密 (tight)”である. ヌタウナギの腸管壁は筋層を欠き, 蠕動運動が非常に弱いと予想され, この...

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Published inArchivum histologicum japonicum Vol. 42; no. 4; pp. 413 - 421
Main Authors 藤田, 尚男, 高垣, 謙二, 石村, 和敬, 江川, 健士
Format Journal Article
LanguageEnglish
Japanese
Published 国際組織細胞学会 1979
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ISSN0004-0681
DOI10.1679/aohc1950.42.413

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Summary:ヌタウナギ (Eptatretus burgeri) の腸上皮の細胞間結合を おもに凍結割断法で観察した. ヌタウナギの腸上皮は, 高さ約160μmの極めて丈の高い上皮細胞からなっている. 超薄切片像では, 典型的な接着複合体が上皮細胞の側面細胞膜の上部に見られる. 凍結割断像を観察すると, 閉鎖帯は非常によく発達した形態を示している. 閉鎖帯の線條の数は7-19 (13.7±2.9) 本, 深さは0.3-2.0 (1.11±0.34)μmであり, 他の動物の腸上皮のものに比較して 極めて“緊密 (tight)”である. ヌタウナギの腸管壁は筋層を欠き, 蠕動運動が非常に弱いと予想され, このため腸管内の食物は上皮細胞自身の運動によって運ばれると考えられる. 著しく発達した閉鎖帯は“透過の関門”としての働きのほかに, 細胞の運動によってもたらされる歪みの力などに対して, 多数の接着斑とともに, 細胞を支える働きをも有していると考えられる. P面のギャップ結合は, 直径120Åの膜内粒子が密に集まったものとして観察され, 全体として不規則な形のものが多い. 膜内粒子は特別な配列形式をとらない. ギャップ結合の一部は, 膜内粒子の線状配列で構成されている. 線状のギャップ結合は, 他のギャップ結合と連続していたり, また明瞭な境界なく閉鎖帯の稜線 (P面) に移行していることがある. このことは, ヌタウナギ腸上皮の閉鎖帯とギャップ結合が共通の構成要素を有している可能性を示唆している.
ISSN:0004-0681
DOI:10.1679/aohc1950.42.413