ヒツジの下垂体前葉の細胞学的ならびに細胞化学的研究

各種の染色法および細胞化学的方法によってヒツジの下垂体前葉の細胞型を検討し, 2型の酸好性細胞 (α細胞とε細胞), 2型の両好性細胞 (ζ細胞とδ1細胞), および2型の塩基好性細胞 (β細胞とδ2細胞) の6型を区別した. さらに去勢, 甲状腺除去, 副腎除去による各細胞の変化を検討した. 1. α細胞とε細胞はともに酸好性細胞で燐脂質を含み, アゾ色素と結合する. α細胞はトリクロームまたはテトラクローム染色でオレンジGに好染するが, ε細胞は酸フクシン, エリスロシン, アゾカルミンなどで好染し, PASに弱い反応を示すが, 水溶性の糖蛋白は含まない. 2. 両好性細胞 (ζ細胞とδ1...

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Published inArchivum histologicum japonicum Vol. 29; no. 5; pp. 427 - 445
Main Authors 見上, 晋一, 大門, 建夫
Format Journal Article
LanguageEnglish
Published 国際組織細胞学会 1968
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Summary:各種の染色法および細胞化学的方法によってヒツジの下垂体前葉の細胞型を検討し, 2型の酸好性細胞 (α細胞とε細胞), 2型の両好性細胞 (ζ細胞とδ1細胞), および2型の塩基好性細胞 (β細胞とδ2細胞) の6型を区別した. さらに去勢, 甲状腺除去, 副腎除去による各細胞の変化を検討した. 1. α細胞とε細胞はともに酸好性細胞で燐脂質を含み, アゾ色素と結合する. α細胞はトリクロームまたはテトラクローム染色でオレンジGに好染するが, ε細胞は酸フクシン, エリスロシン, アゾカルミンなどで好染し, PASに弱い反応を示すが, 水溶性の糖蛋白は含まない. 2. 両好性細胞 (ζ細胞とδ1細胞) は酸性色素と塩基性色素に同時に染まり, PASに陽性である. ζ細胞の顆粒はアルデヒドフクシン (AF) に弱く反応するが, アルデヒドチオニン (AT) やメチル青 (MB) に染まらず, 過蟻酸-アルシアン青-PAS (PFA/AB/PAS) 法でR型を示す. ζ細胞は副腎除去によって著明な脱顆粒を起こして肥大し, 副腎除去細胞になるので, ACTH産生細胞と考えられる. 3. 塩基好性細胞はアニリン青に好染し, PASに陽性である. β細胞とδ2細胞の2型がある. β細胞は zona tuberalis のみに分布し, その顆粒はPASやAFに強い陽性を示すが, ATやMBに染まらない. PFA/AB/PAS法でS型を示す. 甲状腺除去後, 著明に肥大して空胞化し, 甲状腺除去細胞になるので, TSH産生細胞である. 4. δ1細胞は両好性細胞, δ2細胞は塩基好性細胞であるが, ともにAFには染まらないが, PAS, MB, ATに濃染し, PFA/AB/PAS法でS型を示す. ともに去勢後, 増数肥大して去勢細胞になるので, GTH産生細胞である. δ1細胞はその顆粒が2.5%TCAで抽出されないのでLH産生細胞であろう.
ISSN:0004-0681
DOI:10.1679/aohc1950.29.427