4.塞栓源としての頸動脈病変 病理学的検討

「はじめに」頸動脈のアテローム硬化はアテローム血栓性脳梗塞の責任血管病変の一つであり, 病変の進展に伴い内腔の狭窄やプラークの線維性被膜の破綻によって血栓の形成がおこり, さらには血栓の一部が末梢動脈への塞栓源となって, 血流の支配領域の虚血の原因となる1)と考えられている. 今回の発表では, とくに塞栓性機序に着目して, 我々の行った病理学的解析の結果を紹介する. 1. 頸動脈病変によるアテローム血栓性脳梗塞の特徴 頸動脈病変を基盤に発生するアテローム血栓性脳梗塞は, 血管病変の存在する側に片側性にみられることが多く, 臨床症状も病変部位によって多彩で, 出血性梗塞が多く, 一般的には, 灌...

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Published in脳卒中 Vol. 23; no. 4; pp. 347 - 350
Main Author 益田, 順一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本脳卒中学会 25.12.2001
日本脳卒中学会
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Summary:「はじめに」頸動脈のアテローム硬化はアテローム血栓性脳梗塞の責任血管病変の一つであり, 病変の進展に伴い内腔の狭窄やプラークの線維性被膜の破綻によって血栓の形成がおこり, さらには血栓の一部が末梢動脈への塞栓源となって, 血流の支配領域の虚血の原因となる1)と考えられている. 今回の発表では, とくに塞栓性機序に着目して, 我々の行った病理学的解析の結果を紹介する. 1. 頸動脈病変によるアテローム血栓性脳梗塞の特徴 頸動脈病変を基盤に発生するアテローム血栓性脳梗塞は, 血管病変の存在する側に片側性にみられることが多く, 臨床症状も病変部位によって多彩で, 出血性梗塞が多く, 一般的には, 灌流域の末梢領域いわゆるBorderzoneに脳梗塞が多発することが特徴とされている. アテローム血栓性脳梗塞がborderzoneに発生する理由として, 主に2つの仮説が提唱されてきた(図1). 第一は, 頸動脈のアテローム硬化と血栓形成によって血管内腔の狭窄がおこる結果, 灌流域に血流不全がおこるというものでdistal perfusion failureと呼ばれ血行力学的変化の影響をうけやすい灌流域の末梢領域に脳梗塞がおこるとする考え方である. もう一つの仮説は, 動脈原性塞栓症(artery-to-artery embolism)の機序で, 頸動脈壁から遊離し, 断片化した血栓が皮質枝の内径の小さな末梢動脈にロッジするために, border-zoneに脳梗塞がおきてくるとする仮説である.
ISSN:0912-0726
1883-1923
DOI:10.3995/jstroke.23.347